新型コロナウイルス感染拡大の影響で、この日の試合後の監督や選手の取材は、ウェブ(テレビ電話)会見だけとなった。このスタジアムでの取材場所は室内しかなく、人の密集ができ、感染のリスクが高まるための措置だ。

実際にどんな取材形式だったかというと、プレス控室に1台のパソコンが用意され、その周囲を計50人ほどの記者が取り囲んだ。まるでロボットを相手に取材する感覚だろうか。Jリーグ元年から取材する記者も、初めての経験になった。

パソコンの画面には、別室にいる選手らが1人ずつ登場した。名古屋グランパスからは得点したMF阿部浩之(30)を含む選手3人と、イタリア人のマッシモ・フィッカデンティ監督(52)。

この形式での長所は、もちろんウイルス感染などのリスクを減らせること。短所は、報道陣の立場でいうと冗談が言えない、堅苦しい空気になることだろうか。

質問事項は試合の収穫や課題など、あまりにも形式的な内容に偏ってしまう。当たり前と言えば当たり前なのだが、記者はしびれを切らせ、画面に映った阿部に聞いてみた。

「この取材のスタイルはどう思いますか?」

「斬新で面白いですね。これからも続けてください」。笑いながら答える阿部の顔があった。やっと、この会見で冗談が出た。

「無観客ながらDAZN(ダ・ゾーン)で配信されている感覚は?」

「サポーターの声援の大事さが分かりました。早く元の状態に戻れたらいいですね」。今度はまじめに答える阿部の顔があった。

通常はミックスゾーンと呼ばれる場所で全選手が対象となり、自由に取材ができる。だが、この事態が収束していかない限り、テレビ電話を使った取材が、今後は主流になる可能性もあるという。

名古屋の梅村広報は「プロ野球で感染者が出た影響も、少なからずあります。いまだに感染が広がっていることを考えると、こういう対処になってしまいました」と、申し訳なさそうに説明してくれた。選手もサポーターもわれわれ報道陣も、我慢の日々がまだまだ続きそうだ。【横田和幸】