プロスポーツ界で真っ先にJリーグが「延期」を決断した。25日、村井満チェアマン(60)が東京・文京区内のJFAハウスで会見。新型コロナウイルスの影響から3月15日までの公式戦94試合(ルヴァン杯16試合、リーグ戦78試合)の延期を理事会で決定したと発表した。24日に発表された「これから1~2週間が瀬戸際」との政府見解を受け、この日の理事会で全会一致で決定した。延期試合は東京オリンピック(五輪)前後の平日開催を候補に調整していく。

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村井チェアマンの厳しく硬い表情が、決断の重さを物語っていた。開幕節を終えたばかりのリーグ戦を、約3週間も延期すると決めた。新型コロナウイルスの脅威にさらされている日本列島において、主要スポーツ団体では初の決断。Jリーグとしても、自然災害以外では初の延期となる。「1つの大きな決定をした」。苦渋の決断だった。

前夜、事態が急転した。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議での「これから1週間~2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となる」という見解が政府から出された。Jリーグは一夜明けたこの日午前11時から20日、24日に続いて全クラブの実行委員会を中心としたウェブ会議を実施して協議した。

Jリーグでは感染者や発症者は報告されておらず、21日からの開幕節でもスタッフのマスク着用や各入り口などに消毒液を設置するなど十分な対策は講じていた。「第2節以降も十分に対応できる自負、準備をしていた。1週間~2週間が極めて重要であるならば、Jリーグとして協力していく必要があるだろうということで合意した」。翌日のルヴァン杯に向けてクラブとサポーターが移動することを考慮し、チェアマンが同杯の延期を決断。午後の理事会でリーグ戦の延期も決定した。プロサッカーリーグとしての決定をバスケットボールや大相撲、野球などの団体には伝えた。

延期期間は3週間と幅を持たせた。感染症の専門家と協議して情勢を慎重に見極める方針で、状況次第では延長の可能性も残した。延期試合は「国民が大変期待している五輪なのでなるべく協力することは継続していきたい」と五輪期間の前後で調整する。

新型コロナウイルスの猛威は3月の代表戦にも及んでいる。27日に対戦予定のU-23南アフリカから来日取りやめの意向を伝えられている五輪代表だが、同30日の同コートジボワール戦も予断を許さない状況。A代表のワールドカップ(W杯)アジア2次予選2試合も情勢は楽観視できない。そんな中でとったJリーグの決断。村井チェアマンは「この1、2週間がピークを先送りする専門家の意見があるように、少しでも感染が拡大しないことを願っています」と言葉に力を込めた。【浜本卓也】