Jリーグは25日、新型コロナウイルスの感染拡大により、3月15日までの公式戦94試合(ルヴァン杯16試合、リーグ戦78試合)を延期すると発表した。東京・文京区内で行われた理事会で決定した。24日に開催された新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で「これから1週間~2週間が、急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となる」との見解が発表されたことを受けて決まった。

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Jリーグは昨季、総入場者数が初めて1100万人を超え、J1の平均入場者数(2万751人)も2万人の大台突破を初めて達成した。今季は東京オリンピック(五輪)にワールドカップ(W杯)アジア最終予選と、サッカー界はビッグイベントが控える。さらなる集客が予想されるJリーグや各クラブにとって、大きなビジネスチャンスが広がるシーズンなのは疑いようもない。それでも村井満チェアマンは「政府が言っている1週、2週の間に大規模なイベントがあるのはJリーグ」と延期を決断した。

村井チェアマンはビジネス界出身だが、昨年に本紙で連載したコラムにも思いや考えの下地に「人々」と「未来」があった。Jリーグの理念の1つに「国民の心身の健全な発達に寄与する」とある。「地域」に育てられ、共に成長してきた自負がある。試合観戦には不特定多数の老若男女が訪れる。「人々」と「未来」を危険にさらすわけにはいかないというJの心根が迅速な対応へと突き動かした。

無観客試合という選択肢もあった。だが村井チェアマンは「勝った、負けたを競い合うだけでなく、ファン、サポーターにそれをお届けするために存在している。試合日程を変更してでも、大会方式をチューニングしてでも、お客さまの前で試合を行うべきと考えている」との見解を示した。延期ならば日程をあらためて興行が実施できる。延期決定が社会への注意喚起の十分なメッセージにもなりうる。感染拡大、経営圧迫…多くの「不安」から「人々」を守るには、Jの「延期」はベストな選択になると信じている。【サッカー担当キャップ=浜本卓也】