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「これがプロか!」関川に衝撃受けた1年前…徳島市立MF平佑斗が“vs静学”に闘志

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徳島市立高MF平佑斗(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.3 全国高校選手権3回戦 徳島市立高1-0筑陽学園高 駒沢]

 守備では最終ラインに組み込まれ、攻撃ではカウンターの先鋒へと大忙し。徳島市立高の右ウイングバックを担うMF平佑斗(3年)は自身の役割に「キツいっす」と述べつつも、「そんなにスタミナは自信なくて、練習の素走りではそんなに走れない。ただ試合では走れるんですよね」と笑顔を見せた。

「攻撃もしなきゃいけないし、守備もしなきゃいけない。ポジション取りもCBと協力してしなきゃいけない。難しい部分もあって大変だけど、CBの子が声をかけてやってくれているので、いい感じに行けている」。現状の立場に充実感を覚えている背番号8は、徳島市立の攻守のキーマンだ。

 今季の全国大会6試合のうち無失点が5試合という堅守を武器する徳島市立。それでも得点することを放棄しているわけではない。「チャンスだなと思ったら果敢に飛び出して、ボールをもらったら仕掛ける意識を持っている」。平はそうした守備から攻撃への切り替え役を一手に担っている。

「監督から言われるのは『負けないことが大事』だと。『点取られたらおしまいだ』と。点を取られないようにまずは守備から、その次に攻撃に移るように言われている」。そんな守備のチームは、今大会初戦までの全国4勝が全て0-0でのPK勝利。それが『PK狙い』という誤解も呼んでおり、平は「だから点を取って勝ちたいと思っていた」と得点意欲を持ち続けてきた。

 全国選手権3回戦を迎えたこの日、そうした気持ちがようやく実った。前半22分、セットプレーからDF三倉頼真(2年)がゴールを挙げると、その後は平の攻撃参加などで相手に圧力もかけつつ80分間を完封。試合後、平は「率直に点を取って勝てたことが嬉しい」とホッとした様子を見せた。

 平にとって今回は2度目の全国選手権。前回大会もレギュラーとして出場していたが、一つの苦い記憶があるという。それは大会初戦となった2回戦・流通経済大柏戦でのことだった。

「関川郁万選手(現鹿島)とコンタクトするときがあって、絶対に自分が体を入れて勝てるなって思った瞬間があったんですけど、逆に俺が吹っ飛ばされたんです。めちゃめちゃ強くて。これがプロか!って思いました」。

 この経験は平のサッカー人生において転機にもなった。「その試合に負けて、意識が変わった。筋トレを増やして、下半身を中心にスピードを高めながら上半身も鍛えて1年間やってきた。そうしたら(初戦の)尚志戦も当たり負けしていないし、今日も当たり負けしなかった。あそこで変わったのかなと思う」。

 もともと愛媛県から越境入学してきた身。高校生活にかける思いは並ならぬものがある。河野博幸監督も「県外組は何しに来ているかハッキリしているので、やっぱりサボらないですよね。雰囲気も良くしてくれる。いまの3年生は県外組の子らがいなかったらどういうチームになっているか分からない。引っ張ってくれています」と手放しで評価している。

 平も「県外から来ているので1年生の時からそれは意識している」とその立場を自覚する。「1年生の時は一番下のカテゴリから始まって試行錯誤しながら挑戦して、努力した結果Aチームに上がれて、選手権でもベンチメンバーに入れてもらった。去年も最初は試合に出られていなかったけど、悔しい思いがあって選手権でスタートから出られるようになった。人に負けたくないという思いは人一倍ある」。

 だからこそ3年間の集大成とも言える今大会で、できるだけ長い時間を過ごしていく構えだ。準々決勝の相手は静岡学園高。鹿島アントラーズに加入することが内定しているMF松村優太(3年)を要するテクニック集団だが、平は3試合4発と大爆発を果たしている左サイドハーフのMF小山尚紀(3年)とマッチアップすることになるだろう。

 実は1年生の時にフェスティバルでマッチアップを経験。「自分のサイドからは全然やられる感じはなかった。自信を持って次の試合も臨める」と良い手応えも残る。「俺が止めて完封したらヒーローですよね(笑)。まあ完封できたらいいけど、あっちもうまいし、ちぎってくるのでチームで止めたいです」。サッカー王国の優勝候補喰いに向け、闘志を燃やしている。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

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