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PK成功後は後続を支え、雨中の大歓声をさらに煽った横浜FM水沼宏太「鳥肌立つくらい良かった」

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PK成功で叫ぶMF水沼宏太

[4.24 ACL準決勝第2戦 横浜FM 3-2(PK5-4) 蔚山現代 日産ス]

 16098人という数字以上に熱量あふれた日産スタジアムをさらに盛り立てた。横浜F・マリノスMF水沼宏太はACL準決勝の後半36分から途中出場し、10人で戦うチームにエネルギーを加えると、PK戦では2人目のキッカーとして見事に成功。その後は雨の中で声を上げるサポーターを煽り続け、ホームでの歴史的勝利をもたらした。

 横浜FMのキッカーはコーチ陣の指名制。「蹴るというのは分かっていた」という水沼に託されたのはFWアンデルソン・ロペスに次ぐ2番目だった。

「ロペの次に蹴ることがわかってから、思ったよりは冷静に行けた」。長い助走からペナルティスポットに走ると、相手GKの逆を突く右のコースにズドン。ゴールネットが揺れると、その場で豪快なガッツポーズを見せ、会場を沸かせていた。

 その後は「とにかく自分が決めたから、あとは託すしかない。(チームメートに)大丈夫だよとずっと言い続けていた」と苦笑い気味に振り返った水沼だが、そこで同時に目を引いたのはサポーターの歓声に合わせるようにスタンドに向かって煽る姿だった。水沼はその理由を次のように語った。

「PKを決めた時はただ嬉しかったから叫んだのもあるけど、ポープ(・ウィリアム)が守る時にこっちから見ていたゴール裏の雰囲気がめちゃくちゃ鳥肌立つくらい良かった。ロペが蹴って、次かな。これは絶対に(相手にとって)プレッシャーになるなと思ったので、とにかくみんなに一緒に戦ってくれって。それを感じてもらえるようにやりました」

 そんな思いは勝利決定後にも表れ、すぐにサポーターの元に走っていってガッツポーズ。「みんなで戦えたと思った。自分たちがとにかく決勝に行くんだという強い気持ちを持っていたし、平日にもかかわらず、さらに雨にもかかわらず来てくれた人たちは一緒に決勝に行きたい気持ちを持ってきてくれたと思うので、一緒の思いでやれた。それがあの行動につながったと思う」。ミックスゾーンでは声を枯らした様子で、サポーターと共に掴んだ決勝への切符を誇っていた。

 それでも決勝に目を向けると、感傷に浸ることなく気を引き締めていた。「やっとここまで来られたというのはあるけど、決勝まで行って負けてしまえば、今日負けたのと同じだと思う。優勝しなければ何も残らない。本当にそこだけ」。J1リーグ、ルヴァン杯、天皇杯の優勝経験を持つ水沼にとって、アジア制覇は「そこだけ取れていないので、めちゃくちゃ欲しいタイトル」。クラブ史上初の栄誉に向けて「ACLのタイトルはすごく大きいものがある」と力を込めた。

 もっとも中2日で次節・C大阪戦を控えるリーグ戦のタイトルレースも軽んじるつもりはない。「リーグ戦も中2日であっておそろかにできないし、とにかく来る試合、来る試合、自分たちが最高の準備をしたい」。ACL決勝進出でまだまだ過密日程は続くが、それは強者の宿命。「これだけ試合があって過密だと言われるかもしれないけど、これだけできるのは強いチームだけ。それを喜びに感じて、幸せに感じて、感謝の気持ちを持ってやっていきたい」と決意を語った。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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