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「ドイツは負けるべくして負けた」日本の急成長を実感する広島のスキッベ監督が、両国を冷静に客観視「世界トップに引けを取らない」とリスペクトも

カテゴリ:Jリーグ

元川悦子

2024年04月20日

集大成となった2014年のブラジルW杯

ドイツの育成改革を手掛けたスキッベ監督。その経験を活かし、日本でも多くの若手を成長させている。(C)2024 S.FC

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 サンフレッチェ広島を率いるミヒャエル・スキッベ監督が、選手育成に情熱を燃やしていることは前回も触れたが、その原点は指導者としての情熱に満ち溢れていた20~30代の経験が大きいのだろう。

 現役時代はシャルケで将来を嘱望されていたFWだった彼は、膝の怪我によって22歳という若さで選手生活に区切りをつけ、指導者に転身することになった。最初に指導したのはシャルケのユースカテゴリー。そこからドルトムントではユース、セカンドチーム、トップチームで指揮を執っている。

「私が初来日したのは95~96年。ドルトムントユースにいた頃でした。もう30年近く前になるんですね」と本人も懐かしさを覚えている様子だった。

 スキッベ監督の名を世界のサッカー界に広く知らしめたのが、2000~05年にかけてのドイツサッカー連盟(DFB)時代だろう。

 98年フランス・ワールドカップでベスト8、ユーロ2000でグループステージ敗退と当時のドイツは低迷期に差し掛かっており、育成改革が急務だった。そこで彼はフォルカー・フィンケ、ラルフ・ラングニックらとともにドイツ全土のブンデスリーガのユースの整備に着手。シュツットブンクト(トレセン)の改革、移民に対するサッカー解放にも乗り出し、新世代のタレントが出てくるように仕向けたのだ。

「一番大きかったのは、ブンデスリーガのユースカテゴリーのトレーニング時間を倍に確保できるようにしたこと。それまでドイツの若いエリートは週4回、夕方から練習するだけだったんですが、さらに午前中に2回の練習ができるようになり、補習(自主練)も可能にしたんです。

 さらに地方の競技レベルを引き上げるべく、強いチーム同士が対戦できる仕組みを作り、トレセン活動の際にも専任の指導者、医療スタッフ、学校のサポートスタッフなどを配置。グランド整備も進め、一つひとつ、環境を改善してきました」

 努力の甲斐あって、2000年代半ば以降はバスティアン・シュバインシュタイガーやフィリップ・ラームといった若手が台頭。さらにメスト・エジルやトーマス・ミュラーのような技巧派も出てきて、ドイツのサッカーが目覚ましい進化を遂げる。

 
 その集大成となったのが、2014年のブラジルW杯だろう。準決勝でブラジルを7-1と叩きのめした「ミネイロンの惨劇」は見る者に衝撃を与え、圧倒的な強さで優勝。大きな成果を残したが、その種まきをした1人であるスキッベ監督も充実感を覚えたに違いない。

「昔のドイツは走れて戦える選手が圧倒的に多かったのですが、育成改革以降は技術や戦術眼のある選手が増えていきました。今の代表を見ても、セルジュ・ニャブリやレロイ・ザネのようなテクニカルなタイプが何人もいる。それはポジティブな要素だと思います。

 けれども、逆にかつての象徴的存在だったオリバー・ビアホフやミロスラフ・クローゼ、ルーカス・ポドルスキのような力強くタフに戦える選手が減ってしまった。最前線でターゲットになれるのも、今の代表ではニクラス・フュルクルクくらいで、ユスファ・ムココも敵を背負って何とかするタイプではない。そういった現実を踏まえると、やはりチームとして技術と強さのバランスが一番取れていたのが2014年だったのかなとも感じます」

 あれから10年が経過し、ドイツは2022年カタールW杯と2023年の親善試合で、二度続けて日本に黒星を喫することになった。約30年間、日本とドイツのサッカーの変化を見続けてきたスキッベ監督は、少なからず複雑な感情を抱いたはずだ。

「まさにドイツは『負けるべくして負けた』と思いますし、日本の急成長を痛感しました。20年前の日本はそこまで伝統や確固たるスタイルを持たない国でしたが、逆にいろんなものを吸収し、大きく進化を遂げることができた。今では世界トップに引けを取らない戦いができる国になったと思います」と、スキッベ監督は日本へのリスペクトを口にする。

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