【ドーハ16日=佐藤成】10人の日本が中国相手に1-0で逃げ切り、白星発進した。3・5枠のパリ五輪出場権を争う大会の初戦。開始8分、MF松木玖生(20=東京)のゴールで先制した9分後にDF西尾隆矢(22=C大阪)が退場するアクシデントも、先発に185センチ超を7人も並べてきた相手のパワープレーに1人少なくても耐え、虎の子の1点を守り切った。8大会連続の五輪出場へ逆境でも勝ち点3をもぎ取った。

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パリ路の1歩を踏んだ若きサムライたちに、いきなり試練が待っていた。松木の先制から9分後、西尾がまさかの退場。ボールと関係ない場面で後ろから相手に詰められ、腕を払った際に顔へ入った。VAR確認の結果、一発退場。やや不運な判定だったが、決定は覆らない。追加タイムも含めて残り86分間、日本は10人での戦いを強いられた。

欧州帰りの山本を下げてDF木村を投入。ダブルボランチの4-4-1陣形に変えて対応した。一転して中国にボールを握られ、支配率は速報値で日本38%-中国62%。前半を何とか1点リードで折り返したものの、初戦からチームの一体感が試される形となった。

ただ、大会前から指揮官は警戒心を強めていた。「想定外があるかもしれない」。さっそく数的不利に見舞われたが、動じない準備があった。初戦を前に、これまで明確に置いてこなかった主将に、初めてMF藤田を任命。「一体感、団結力をもっともっと強固にしていくため」と意図を説明し、さらに主将を支える西尾、山本、松木、DF内野貴の4人を副主将に選出。タフなアジア予選を勝ち抜くため、抜かりなかった。

目の前で起きたこと全てチームの糧とする。1人少なくなり、強みとする前線からの強度の高い守備は発揮できなかった。それでもブロックを固めて耐え切った後半。大岩監督はチーム戦術と個人戦術の双方に手応えを示しつつ「アクシデントは、想定していたとはいえ、なかなか厳しい試合になった。次に生かしたい」。決勝弾の松木も「苦しいゲーム勝ち切れたのは大きい。次につながった。リーグ戦で勝ちと引き分けで終わるのは全然違う」とうなずいた。逆境をはねのけて、初戦から一致団結。期せずしての総力戦で、花の都への歩みを1つ進めた。