堂安律、密着マークで光った技巧テク カメラが捉えた連続プレー…ドイツでも抜きんでた技量【コラム】

ダルムシュタット戦でゴールを決めた堂安律【写真:徳原隆元】
ダルムシュタット戦でゴールを決めた堂安律【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】決勝ゴール奪ったダルムシュタット戦のプレーに焦点

 ピッチに立つ10人のフィールドプレーヤーが周囲の選手とのポジショニングでバランスを考え、相手に付け入る隙やスペースを作らないように戦っている。堂安律が所属するフライブルクの印象だ。

 ゴール裏からカメラのファインダーを通して見るフライブルクの選手たちは、自身がチーム戦術の欠点にならないように、ピッチ全体にアンテナを張り巡らせ、気の抜けない根気のいるプレーを見せていた。規則正しさへの追求は、現代サッカーの勝利には不可欠な要素で、ひいてはチームの大崩れを防ぎ安定感をもたらす。そうしたチームワークを第一としている姿勢が、フライブルクのサッカーには顕著に表れている。

 ブンデスリーガ第29節ダルムシュタット対フライブルクの一戦で、堂安は決勝点となるゴールをマークした。味方とのワンツーから左足で放たれたシュートは、わずかに右側に巻くように美しい軌道を描いてゴールネットへと吸い込まれた。

 堂安は試合のなかで積極的にチームメイトとコミュニケーションを取り、アウト・オブ・プレーの際にはラインズマンとも会話を交わしている。自信を持って試合に臨んでいるからこそできる業といったところだろうか。

 さらに味方への指示だけでなく、チャンスと見れば自分にボールを出すように、大きなジェスチャーを交えて要求していた。フライブルクの背番号42には、チームを牽引する選手としての風格さえ漂う。

 ボールテクニックの面で言えば、堂安はこの試合のピッチに立った選手のなかで、最も優れていたと思う。この日に記録された唯一の得点となったコントロールショットが示すように、テクニックを武器にブンデスリーガの舞台を戦っている。

 しかし、堂安はテクニックだけの選手ではない。攻守に渡ってチームに貢献する豊富な運動量も堂安というサッカー選手の特徴だ。さらに、体格面ではヨーロッパ出身の選手と比較した場合、そこは劣るものの大型DFとのマッチアップでも、体幹の強さと素早い身のこなしで対抗している。そうした場面をこのダルムシュタット戦で撮影することができた。

選手の密着マークを背負いながら果敢に突破

 前半、ダルムシュタットの選手の密着マークを背負いながら、堂安は味方からのパスを受ける。この時、目指すゴールを背にしている。堂安はなんとかゴールに向かおうとボールをキープしながら反転を試みる。

 だが、相手選手も容赦がない。堂安は捻じ伏せられるような強烈なプレッシャーを受け、さらに新たな敵の選手がマークに近付く。ここで堂安は敵に挟まれながらも倒れることなく、インサイドキックでボールを浮かせ、自身も2人の間を突破する。

 しかし、これで相手のマークは終わらない。フライブルク背番号8マキシミリアン・エッゲシュタインに張り付いていたダルムシュタットの選手が、堂安の動きを止めようと接近して左足を伸ばす。フライブルクの右サイドのスペシャリストはこのマークも掻い潜ろうとするが、ファウル覚悟のプレーの前についに転倒してしまう。結果的にダルムシュタットのプレーに主審はファウルの判定を下し、フライブルクはFK(フリーキック)を得ることになる。

 所属クラブや日本代表として、さまざまなタイプの選手と対戦してきている堂安。そのなかで起こる、あらゆる状況に対応できる能力を持っているからこそ、こうして世界で戦えているのだ。苦手を作っているようでは世界では通用しない。堂安の対応力の高さを改めて感じた連続プレーだった。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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