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涙なしでは語れない川崎の恩師や仲間たちとの別れ。山根視来が気持ちを書き綴ったメモ帳とMLSへの想い【インタビュー/パート3】

カテゴリ:海外日本人

本田健介(サッカーダイジェスト)

2024年03月29日

メモ帳に書いたのは

ロサンゼルス・ギャラクシーでの挑戦を決めた山根。ただその決断の裏には様々な想いがあった。写真:本人提供

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 2024年、川崎からMLSのロサンゼルス・ギャラクシーへの移籍を決めたのが、日本代表としてカタール・ワールドカップにも出場した右SBの山根視来である。30歳での初の海外挑戦。その姿を追ったインタビューを3回に分けてお届けしよう。

――◆――◆―― 

 山根の手もとには誰にも見せないメモ帳がある。

 迷った時、頭を整理したい時、彼はその時々の想いや、かけられた言葉を綴ってきた。それは今回の移籍に向けても同様だった。

 川崎のチームメイトたちにどんな言葉をかけられたのか? そう質問をすると、「一回、メモ帳を見返しても良いですか?」と丁寧に当時の記憶と言葉の数々を振り返っていく。「絶対に見せないですよ」。その中身は門外不出なのだという。

「先ほども話しましたが、ACLは自分にとってすごく大きなウェイトを占めていたので、迷った部分でした。でも考えてみると新しい挑戦に傾いている自分がいた。

 ただ、決めるまでの間にいろんな人と話をしながら、その都度思ったことを客観視できるようにメモ帳に書いていったんです。やっぱりその時の感情で、視野が狭くなってしまうことがあるので、起こった出来事、その時に何を感じたか、海外に行っている自分をイメージした時の気持ち、誰かに言われてどういう風に思ったかなど、バーッと書いていきました。

 いろんな言葉をかけてもらい、残ろうかなと考えた時もありました。でもメモを客観的に見返すと、新たな環境に進みたがっている自分がいるのが分かったんです。

 川崎のチームメイトでは、皆さんが想像している人には、ほぼ相談したと思います。そのなかで一番印象に残っているのは、やはりアキさん(家長昭博)の存在でした。アキさんとは特別深い話をする仲ではなかったのですが、僕のアキさんへの信頼度はそりゃ相当ですし、(右SBと右ウイングとして)試合中は一番近くにいて、一番多く一緒に出場したはずです。

 アキさんがいたからここまで来られたし、僕がもっとアキさんの要求するレベルに応えることができていたら、どれだけワクワクする攻撃が右サイドからできるのだろうと常にモチベーションにもなっていました。

 そんなアキさんが、「残ってほしい」とかではないですよ、以前に僕のことを評価してくれていたと。「お前の話をしていたよ」と他の人から教えてもらったんです。それって直接言われるよりも嬉しいんですよね。なんだか心が震えて揺さぶられました」

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アキさんこと家長ら多くの仲間たちに囲まれた川崎時代。自らの選択に関して相談もしたという。(C)SOCCER DIGEST

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 さらに兄貴分の小林悠にはいち早く相談に乗ってもらい、様々なアドバイスや「お前がいなくなったら友だちがいなくなっちゃうよ」と冗談交じりの引き留めもしてもらった。脇坂泰斗、登里享平、瀬川祐輔...多くの仲間たちと語り合った。

 そのなかで共通して送られた言葉があったという。それは山根が多くの汗と涙を流しながら進んできた道を称えてくれる、何よりの誉れだった。

「みんなサッカーの技術のところは一切褒めてくれないんですよ(笑)。でも自分のサッカーに臨む姿勢をみんな褒めてくれた。うん...、そこはやっぱり嬉しかったですね」

 大先輩の中村憲剛からはこんな言葉をもらった。

「あなたを見て学んだことはたくさんあったし、自分が今後、指導者をしていくうえで、ミキのような選手がこうやって成長していった姿はすごく指標になる」

 そして常に間近で自分の努力を認めてくれていた鬼木達監督に、報告をした際には涙が溢れてきた。技術力が求められる川崎で、テクニックがあったわけではない自分を起用し続けてくれ、サッカーや練習に対する真摯な姿勢を誰よりも理解してくれた恩師であった。

「本当にオニさんには感謝しかなくて。ボロボロ泣きました。改めて一緒に天皇杯を優勝できて良かったなという想いが込み上げてきて」

 多くの人の支えや、自分の進んでききた道は間違いではなかったと改めて認識ながら――そんな晴れやかな想いを抱え、山根は勇気を持って新たな一歩を踏み出したのである。
 
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