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迷いない采配、耐えた守備陣…アジア杯の反省生かした完封勝利に森保監督「もう一回自信になる戦いができた」

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日本代表の森保一監督

[3.21 W杯2次予選 日本 1-0 北朝鮮 国立]

 ベスト8敗退という不完全燃焼な結果に終わったアジアカップから1か月半。再スタートの一戦を1-0の完封勝利で飾った日本代表森保一監督は「選手たちにはもう一回自信になる戦いができたかなと思う」と、苦しみながらもつかみ取った勝ち点3を評価した。

 幸先よく前半2分にMF田中碧のゴールで先制すると、前半はその後も日本ペースで進んだ。相手にシュートを1本も打たせず、前半43分にはMF堂安律が決定機を迎えた。ところが1-0で後半に折り返すと、風向きが変わる。後半2分にゴールネットを揺らされたシーンは相手のファウルに救われたが、シンプルにロングボールを蹴って高さと強さを生かそうとする北朝鮮に押し込まれる時間が続いた。

「特に後半は相手がシンプルにパワーをかけて攻めてくるところで苦戦する流れではあった」。森保監督も認めた展開は、まるでアジアカップ準々決勝のイラン戦(●1-2)を見ているようでもあった。イラン戦も前半は1-0だったが、後半に流れは一変。ロングボールやクロスを多用し、日本のウイークポイントを突いてくるイランに対し、後半10分に同点とされると、防戦一方のまま後半アディショナルタイムに逆転ゴールを許した。

 後半の早い段階で1-1となったイラン戦と単純に比較はできないが、ベンチの動きもこの日は早かった。後半13分、MF守田英正に代えてMF遠藤航を投入し、システムも4-2-3-1から4-1-4-1に変更。さらに同28分から立て続けにFW浅野拓磨、DF谷口彰悟、DF橋岡大樹を送り込み、3バックへと移行した。

 イラン戦後、「相手のサイド攻撃が圧力になっていたので、3バックにすることやサイドバックを代えることを考えてはいた」と振り返った森保監督だが、1-1の展開でイランベンチに動きがなかったこともあり、決断に踏み切れなかった。その反省もあったのだろう。この日の采配に迷いはなかった。

「相手に押し込まれ、圧力を受ける展開になっていたので、さらに押し込まれる展開になってはいけないということで、フレッシュな選手を投入し、守備を安定させたうえでカウンター攻撃を仕掛けようと。相手が出てきているところにスピードのある浅野を投入することで、耐えながらも攻撃を仕掛けていく狙いを持って投入した」

 追加点という結果には結びつかなかったが、3バックに変更後は決定的なピンチもなく、逆に浅野が絡む形でのチャンスを何度か作り出した。森保監督は「押し込まれた戦いの中でも粘り強く、無失点に抑えながら、もう一回流れを引き込もうというところで、選手たちの勝ちたい気持ち、粘り強く最後まで戦う気持ちが勝利に結びついたのかなと思っている」と、アジアカップの悔しさ、反省を糧にした選手たちをねぎらった。

 守備陣に目を向けると、DF冨安健洋不在の中、元日のタイ戦(○5-0)以来、6試合ぶりの完封勝利となった。アジアカップ全5試合に先発しながら計8失点と、結果的に全試合で失点したGK鈴木彩艶にとっても価値ある無失点だった。

「アジアカップからの反省、課題を受けて、今日の試合に臨んでくれて、選手たちが修正してくれた部分もある」。そう話す森保監督は「ゴールキーパー、DFラインと、カタールW杯から比べると経験値が低い中でこれまで戦ってきて、一足飛びに安定というのはなかなか難しい」と指摘。DF吉田麻也、DF酒井宏樹、DF長友佑都といった経験豊富なベテランが並んだカタールW杯を経て、最終ラインも世代交代を進めている段階にある。

「一つひとつ厳しい試合を経験し、確実に成長してくれているということを結果で示してくれたのが今日の選手たちのプレーかなと思う」。アジアカップの経験は決して無駄ではない。「まだまだ改善できるところはたくさんあるが、これからさらに厳しい戦いを経て彼らが成長していくところを監督として期待しているし、楽しみにしていきたい」と、チームとして一歩ずつ成長していくことを誓った。

(取材・文 西山紘平)

●北中米W杯アジア2次予選特集
西山紘平
Text by 西山紘平

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