なでしこジャパンVS北朝鮮は正式発表ないままサウジへ出発 2日で地球半周の熊谷「あってはならない」

スポーツ報知
サポーターの横断幕の前で記念撮影する、なでしこジャパンの選手たち(カメラ・清水 武)

 日本サッカー協会は20日、女子日本代表「なでしこジャパン」が北朝鮮代表と対戦するパリ五輪アジア最終予選第1戦(24日)が、サウジアラビアのジッダで開催予定と公表した。試合開始時間は未定。選手、スタッフは20日夜に2便に分かれて当地に向かった。試合直前に開催地がようやく固まり、DF熊谷紗希(33)=ローマ=は「あってはならないこと」と本音を明かしつつ、長距離移動を乗り越えてパリ切符をつかむ。同予選はホーム&アウェー方式。28日の第2戦は東京・国立競技場で行われ、2戦合計の勝者が五輪出場権を得る。

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 なでしこジャパンの“行き先”がようやく見えた。開催地未定だった24日のパリ五輪予選第1戦・北朝鮮戦について、アジア・サッカー連盟(AFC)から、サウジアラビアのジッダ開催の方向で準備を進めるように指示する連絡が日本側に19日に入った。

 直前まで中国開催案も模索されていたが、20日午前に取材対応した日本協会の佐々木則夫女子委員長(65)は「AFCからは、中立国で検討した中で、中国案はなくなりましたと。今日の夜に2便に分かれて入ります」と説明した。サウジアラビア入国のビザ申請、航空券手配を1日で終えた。ただ、AFCからの正式な開催決定の通達がないまま、この日20時過ぎに成田空港の保安検査場を通過。なでしこジャパンの大移動は、一抹の不安を残したままの“見切り発車”となった。

 日本は手探りのまま、この日まで千葉合宿を続け、パリ五輪切符を懸けた決戦に備えてきた。強行軍を強いられる海外組も出てきた。18日にリーグ戦が行われたDF清水らイングランド組4人は負担軽減のため急きょロンドンに残った。一方で、リーグ戦が16、17日だった主将のDF熊谷や南らは1万キロ近く移動して一時帰国。19日にイタリアから日本に戻り、20日に再び空路で約9500キロ先のジッダに向かうことになった熊谷は身体的、心理的な負担について「正直、こんなことはあってはならない。選手は試合に向けた準備が仕事だが、オーガナイズする方にもベストコンディションで臨ませる責任がある」と運営に苦言を呈した。

 チームは準備を進める。試合開始時間は未定だが、日中の最高気温35度という暑さを考慮して、夕方以降のキックオフを要望。池田太監督(53)は「選手たちはトレーニングにフォーカスしていた。惑わされることなく、しっかりとやっていた。アイスバスとか、体を冷やすものをしっかり準備していく」と指示を出した。昨年11~12月のブラジル遠征では、長距離移動を経て、酷暑下の試合も経験済みだ。苦難の先にパリ切符がある。(田中 孝憲)

 ◆北朝鮮戦をめぐる経緯

 ▽23年11月1日 アジア2次予選を突破し、対戦が決定

 ▽12月30日 AFCが第1戦を平壌・金日成競技場で開催すると発表。その後、日本側はAFCに対し、試合会場の状況が分からず困っているなどの申し出

 ▽24年2月上旬 AFCから日本協会に、中立地開催をするために、別の競技場を提案するよう北朝鮮協会に要請していると連絡が入る

 ▽2月8日 代表メンバー発表。第1戦の開催地未定を公表

 ▽13日 国内組を中心に千葉合宿開始

 ▽18日 欧州組で前週金曜日が試合だった、長谷川、千葉、古賀が帰国

 ▽19日 イタリアでリーグ戦終えた熊谷、南が帰国。イングランドで18日にリーグ戦があった清水、林、植木、長野の4人は帰国せずロンドンで待機

 ◆ジッダ 首都リヤドに次ぐ、サウジアラビア第2の都市で、紅海に面しているため年間を通じて高温多湿。24日の最高気温は35度、最低気温は23度、湿度は46%と予想されている。日本との直線距離は約9500キロで、直行便はなく、ドーハ、ドバイで乗り換えた場合、片道15時間以上の長旅となる。日本との時差はマイナス6時間。なでしこジャパンは過去にサウジアラビアで試合をしたことはない。

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