旧ジャニーズのアイドルたちは自由になる日を信じ、ただ走り続ける

スポーツ報知
旧ジャニーズ事務所

 今年も、残すところ1週間。年の瀬を飾るNHK紅白歌合戦に43年連続で出場してきたジャニーズ、いや旧ジャニーズ事務所のアーティストは、そのステージに立たない。

 3月の英BBC報道を契機とし、創業者のジャニー喜多川氏の性加害問題が各方面に波及した。社長交代、社名変更、事務所は分裂し、被害者補償を担うスマイルアップは補償完了後に廃業する。栄華を極めた金看板は、騒動勃発から1年足らずで消滅した。

 弊紙でも連日大きく報じた。タレント、幹部、スタッフ、関係者の話に耳を傾け、原稿を書きながら、思うことも多かった。事務所の体制や方針の改革と並行して、作品やCMなどでタレントの露出が減った。一体、誰が得をしているのか。今も苦しむ被害者がいる。損得ではないことは、分かっている。だが、しかし―。

 喜多川氏は、多くの人間を傷つけた。その一方で、彼が育てたタレントは、多くの人間を救っている。ライブ会場を始めとした現場で、生きる活力を与える瞬間を何度も目の当たりにしてきた。本番直前まで言葉少ななメンバーも、ステージに立つと声を張り上げ、ファンのために笑顔を絶やさなかった。

 野村克也さんが、大事にした政治家・後藤新平の言葉が頭をよぎる。「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする」。断罪されるべき喜多川氏だが、人をのこしたことも、また事実だと思う。

 タレントやファンは、失望感にさいなまれた一年になった。それでもテレビを見れば、現場に行けば「アイドル」を貫く面々がいる。不安も弱音もある。だが、「ファンの皆さまが一番大事。自分たちが活動をもって示していく」(堂本光一)、「皆さんと一緒に美しい未来へ」(堂本剛)。グループ最年長のキンキを始め、ファンファーストの姿勢は変わらない。紅白に出ない大みそかも、多くのグループが生配信で笑顔を届ける。東山紀之は、俳優人生ラスト舞台となった「チョコレートドーナツ」で言った。

 「信じれば、必ず皆が自由になる」

 喜多川氏への糾弾が因果応報ならば、彼らがより活躍する未来も因果応報。その時を信じ、ただ走り続ける姿に「アイドル」の矜持(きょうじ)が見える。(田中 雄己)

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