シリア戦生中継なし…深夜で放映権1億円超 敵地残り2戦も交渉難航か

スポーツ報知
シリア戦を観戦する田嶋幸三会長(カメラ・今成 良輔)

◆26年北中米W杯アジア2次予選 日本5―0シリア(21日・サウジアラビア・ジッダ)

 シリア戦はテレビ生放送やネットによる生配信の交渉がまとまらず、異例の中継なしとなった。生で日本代表のW杯予選を見られなかったのは、1989年のイタリアW杯アジア1次予選・北朝鮮戦(平壌)でのNHKによる録画中継まで遡る。

 放映権については、最終予選はアジア連盟(AFC)が管轄するが、2次予選は各国協会が持つ。関係者によると今回、シリア側が委託した代理店が日本側に要求したのは1億円超とされる。日本協会の田嶋幸三会長は「(ファンに)申し訳ない気持ちはあるが、お金をつり上げて相場が崩れるのはいいと思っていない」と話した。久保も「相手の要求を全部のむわけにもいかないと思う」と異例の展開に一定の理解も示した。

 放送なしの背景には、局側の事情もある。ある放送関係者は「深夜のキックオフで、対戦国もシリア。仮にゴールデン帯の編成でブラジル戦ならば2億円でも赤字覚悟で中継する局はあるかもしれないが、今回は局の台所事情に見合わなかった」と、シビアに判断した結果だとした。

 民放連・遠藤龍之介会長(フジテレビ副会長)はこの日の会見で「今回のことは残念だと思う反面、これだけライツ(放映権料)の価格が上がると、なかなか取りにいくことが厳しい。今後、適正なライツの程度にしていく新しいシステムがないまま、価格の高騰が続くと、視聴者のみなさんに(試合を)お届けできないことが連続するのではないか」と危機感を強めた。

 最もあおりを食ったのはサポーターだ。X(旧ツイッター)では、どのようにしたら現地サイトで見られるかなどの情報交換がされた。北朝鮮、ミャンマーとのアウェー戦は現時点で開催地が未定。条件次第では、残り2戦も放映権を巡る交渉が難航する可能性がある。

記者の目

 今回の件は、シリア協会と日本側が考える試合の価値に差があったことが要因だ。シリア協会から委託された企業が、日本の代理店に対して試合2日前には放映権の減額を提示したとの話もあるが、すでに固まった放送日程を覆してまで手を挙げる社はなかった。

 10年前とは違い、日本にとっては「勝って当然」の2次予選。さらに深夜帯で視聴率も見込めない一戦に、高額を投じて放送するのはビジネスとして無理がある。日本協会(JFA)の田嶋会長は「夜中の12時過ぎ(キックオフは午後11時45分)ですよ。何億も出せ、と言われても出せない」と日本のテレビ局などの判断に理解を示した。

 この結果、シリアは放映権料を得られることができなかった。来年3月の敵地・北朝鮮戦も放送は未定だが、シリアの失敗を他国は肝に銘じるべきだ。世界と戦う森保ジャパンの姿が、ファンに届かないのは日本サッカーにとってはマイナス。今回、JFAが見せた“ノーと言える日本”の姿勢が、放映権問題を好転させる転機になることを期待したい。(サッカー担当・金川 誉)

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