「アビスパ福岡を応援してます」は肩身が狭い…そんな現実も変わるのかな 悲願タイトル獲得に寄せて

スポーツ報知
初優勝し、表彰式で歓喜する福岡イレブン(カメラ・竜田 卓) 

 ◆ルヴァン杯▽決勝 福岡2―1浦和(4日・国立競技場)

 【サッカー担当・岡島智哉】福岡は浦和を2―1で下し、J参入28年目で悲願の初タイトルを獲得した。前半5分に先制点、49分に追加点を挙げ、終盤は浦和の猛攻をしのいだ。獲得賞金は1億5000万円。

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 福岡で「アビスパ福岡を応援しています!」と堂々と言うことは、少しためらわれる。声を大にして言いづらいというか。

 高校卒業まで福岡で過ごした私の肌感覚であり、個人の所感に過ぎないが、一般論に限りなく近い自信もある。アビスパのファン・サポーターは、少しばかり肩身が狭い。

 福岡において「福岡ソフトバンクホークス」の存在感は圧倒的すぎる。成績はもちろん、その影響力といったらもう。福岡の経済は、ホークスを中心に回っていると言っても過言ではない。

 5年に1回しかJ1にいなかったアビスパは、その影に完全に隠れている。Jリーグ加盟から28年、J1最高順位は8位、その他は全て2桁順位かJ2。カップ戦も優勝なし。お世辞にも、強いとは言えない。子どもの頃、週末に福岡のテレビ局が放送するスポーツ番組では「たっぷりと」ホークス情報をお届けした後に「申し訳程度に」「とても微量の」「あまり熱が感じられない」アビスパ関連のニュースが伝えられていた。

 さらに、お隣の佐賀県に居を構えるサガン鳥栖の台頭は、アビスパ福岡の存在意義を揺るがした。

 鳥栖市は、福岡県の久留米市、小郡市、筑紫野市、那珂川市と隣り合っている。そんな土地柄もあり、鳥栖市近郊の福岡県民に鳥栖サポーターが増えた。鳥栖は2012年にJ1初昇格を果たして以降、一度も降格することなく、すっかりJ1に定着。観客数も、多くの試合でアビスパより多い。ホークスの始球式に、鳥栖の選手が呼ばれることも増えた。

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 そんな“不人気”の環境下で、アビスパは2020年の長谷部茂利監督就任から徐々に力をつけてきた。そしてついにタイトルを獲得。たかがルヴァン、されどルヴァン。歴史的な一歩だ。「優勝」とは、何といい響きだろう。

 だが、タイトルを1つ取っただけで世界が変わるとは思えない。これで博多の森も満員になるぞ!、来年はリーグ戦で優勝争いだ!、などといった考えはさすがに浮かれすぎだ。世の中、そんなに甘くない。地道にコツコツといかなければ。

 …しかし、とはいえ、だけれども。

 アビスパ関係者の皆さま。並びにアビスパを応援し続けてきた皆さま。いつもは少しばかり肩身が狭いかと思いますが「俺たちの街にはアビスパがある」という言葉の意味をかみ締め、今日ぐらいは肩を切って歩きましょう。まあ、ちょっとぐらい浮かれてもいいでしょう。福岡は九州の盟主たい!(サッカー担当=実家は博多の森からチャリで15分=岡島 智哉)

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