【番記者の視点】湘南、J1残留に向けて「ポジティブ」な勝ち点1…総走行距離は首位・神戸を5キロ上回る

スポーツ報知
前半11分、湘南・大橋祐紀(左)が先制ゴールを決めガッツポーズ(カメラ・堺 恒志)

◆明治安田生命J1リーグ 第31節 湘南1―1神戸(28日・レモンS)

 【湘南担当・後藤亮太】17位・湘南が首位・神戸と1―1で引き分け、勝ち点1を積み上げた。

 前半開始からわずか15秒で、ホームのスタジアムに期待感を与えた。キックオフで後ろに下げたボールを、3バックの右の大岩が、右サイドハーフの岡本に展開。ボールを受けた岡本が、中にいた右のインサイドハーフの池田とワンツーで抜け出してセンタリングを上げ、逆サイドの左インサイドハーフの平岡がゴール前に飛び込み、こぼれ球を奥の左サイドハーフの杉岡がシュート。相手DFにブロックされたが、ゴールに向かっていく湘南のアグレッシブな姿勢が、流れをグッと引き寄せた印象だった。

 その勢いが、前半11分という早い時間での先制点につながった。杉岡が中盤でボールカットすると真ん中にドリブルで持ち上がり、エリア内左にいたFW阿部にパス。阿部が絶妙なタイミングで真ん中にパスを送り、エースFW大橋がゴールに流し込んだ。この場面でも、逆サイドの岡本はゴール前に入っていて、池田も少し下がった位置で、フリーでボールを受けられる場所にいた。チャンスとみると、何人もの選手が積極的にゴール前まで走り込む姿勢こそ、終盤に入って復調したチームが見せてきた姿でもあった。

 2戦連続無失点中だった守備陣も、3バック中央のDF金眠泰(キム・ミンテ)がラインを高く設定したことで、前への圧力を強め、大迫、武藤という強力攻撃陣の起点をゴールから遠ざけた。前半は連動した守備からボールを奪い、一人一人が適切なポジションを取りながら、相手ゴールに向かうサッカーを展開。これこそが、目指してきた形なのだろう。

 後半に入り、初優勝を目指す神戸の圧力を受けに回ってしまい、同8分にPKを与えて同点とされた。しかし、以前ならガタッと崩れて連続失点を許すことも多かったが、この直後のキックオフで相手ゴール前まで迫るなど、全員の矢印は相手ゴールに向かい続けていた。試合後のトラッキングデータの総走行距離は、湘南117・699キロで、神戸112・476キロ。5キロ以上も上回ったのは、全員が戦い続けた証拠でもある。

 試合終盤にGK富居が腰付近を負傷。担架でベンチ裏に下がるアクシデントに見舞われ、交代枠を使い切っていたため、主将のDF大岩が急造GKを務める緊急事態もあったが、チーム一丸で乗り切った。

 確かに追加点を決めきれない課題も残ったが、山口智監督は「90分を通して選手はタフに戦ってくれましたし、相手より気持ちがあったと僕自身は思います。戦う術も自信を持って出してくれたと思っています。(勝利できずに)残念ですけど、ポジティブにこの(勝点)1を捉えて次につなげていきたいです」と強調。最下位・横浜FCとの勝ち点差「2」で残り3試合と残留争いは続くが、厳しい戦いの中でも、湘南は確かな成長を続けている。

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