【番記者の視点】DF森重真人が選択したリスク覚悟の「偽ボランチ」…0―2から大逆転勝利を支える

スポーツ報知
森重真人

◆明治安田生命J1リーグ 第28節 FC東京3―2鳥栖(23日・味の素スタジアム)

 【FC東京担当・後藤亮太】FC東京が前半0―2から、後半の3得点で今季初の逆転勝利を飾った。

 終わってみれば劇的な幕切れとなったが、前半終了のホイッスルが鳴ると同時に、ゴール裏のサポーターから大ブーイングが起きたように、前半はとにかく劣勢だった。

 原因は、4―2―3―1システムの鳥栖のトップ下・堀米のポジショニングだった。マークにつかれないように、FC東京のボランチ、センターバック、サイドバックの中間に位置取り。逆にFC東京は、誰がマークに付くかはっきりしないまま自由にやらせてしまった。

 結果的に前半18分の失点では起点を作られ、同32分のPKを献上してしまった場面も、左サイドから堀米に左足でロングボールを自由に蹴らせてしまったことが原因だった。センターバックの森重は「前半は相手の運動量と自分たちを分析してくる中でのポジショニングという所でやられてしまった」と話し、ボランチの松木も「すごく堀米選手が嫌な位置にいて、ボランチもなかなか捕まえにくかった」と振り返ったように、堀米と関わるように、積極的に攻撃参加する相手のダブルボランチの河原、手塚の動きにも混乱しているように見えた。

 前半0―2。必然的に前に重心をかけないといけない状況だったこともあり、「堀米封じ」のため、後半から主将の森重は大胆な選択をした。鳥栖の1トップ・富樫のマークをセンターバックの相棒のエンリケトレビザンに託し、堀米にマンツーマンでマークについた。高い位置を取るサイドハーフをサイドバックが見ていたため、後ろは3対3の同数に。リスク覚悟だっただろうが、結果的に森重が1列前のボランチの位置まで上がったことで、松木、原川のダブルボランチも後ろを気にすることなく、前に圧力をかけることが出来た。

 試合後、松木は「森重さんが個人的な考えであそこまで付いていってくれて、それがすごくチームのためな行動だったので、ボランチからしてもやりやすかったですし、森重さんも『偽ボランチ』ではないですけど、けっこう前にボールに関わってくれたので、その分、リスク管理も伴いましたけど、そこはエンリケとかが潰してくれたので、よかったかなと思います」と感謝。守備だけではなく、「偽ボランチ」森重は、流れの中で攻撃にも加わるなど、後半40分に途中交代するまで、チームを献身的に支え続けた。結果的に後半の3得点で逆転に成功し、対鳥栖戦の連敗を8で止め、リーグ戦も5戦ぶりの勝利を飾った。

 森重「あそこが起点だったので、そこを自分が潰すことで、全体がちょっと落ち着いたかな。あとは後ろはエンリケがしっかり頑張ってくれたのでよかったかなと。どうにかして逆転するしかなかったので、そこはハイリスクハイリターンというか。それぞれが何とか逆転したいという思いで戦って、それが今日はうまくいい方向に転んだ。バタバタした試合だったけど、意地は見せられたかな」

 主役としてスポットライトを浴びることはなかったが、チームの大黒柱は間違いなく、劇的な逆転勝利の立役者だった。

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