【二宮寿朗の週刊文蹴】「魔物」を追い払ったことへの意義

スポーツ報知
モンゴル戦の前半、クロスに飛び込む南野拓実(カメラ・竜田 卓)

 シュートは打たないと入らない。しかし、それが得点に結びつかないと焦りが生じる。代表最多の152キャップを誇る遠藤保仁からこう聞いたことがある。

 「アジア予選はアウェーよりホームの方が難しい。勝って当然と思われているから、お客さんもリードすれば盛り上がるし、逆に点を取れなかったら『おい、大丈夫かよ』っていう雰囲気になる。そうなると空気を感じた経験の少ない選手が必要以上に前に行きすぎたり、普段はやらないミスをしたりということが結構起こりやすい」

 いくら相手が格下だろうが、ゴールが入らなかったら「魔物」が近づいてくる。4年前、2次予選の初戦でシンガポールに引き分けたのも、必要以上のプレッシャーや焦りが「魔物」に化けた。

 近づけないためには何が必要か。1にも2にもゴールである。もっと言うなら、セーフティーリードになる2点差以上だ。それも極力、早い方がいい。森保ジャパンは一瞬、近づきそうになった「魔物」を遠ざけた。

 開始21秒で南野がシュートを放ったが入らない。以降、右サイドを何度も攻略しながらもゴールには至らなかった。ちょっと嫌な空気が流れたものの、22分に南野がようやくゴールを割って払しょくする。29分に吉田、33分に長友、40分に永井と18分間で4ゴール。“なるはや”でセーフティーリードに入ったのは評価できる。

 つまり前半で勝負をつけたことが大きい。9月のミャンマー戦もそうだった。前半で2点を奪い、セーフティーリードを保った。たとえ後半の内容に物足りなさが残ろうとも、アジア予選はまず結果重視。次は中4日でアウェーのタジキスタン戦(15日)を控えている。ある程度、余力を残せた方がいいに決まっている。セーフティーを保ち、しっかりと「魔物」を追い払ったことに意義がある。(スポーツライター)

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