【鹿島】メルカリとの二人三脚「全ては勝利のために」世界目指す

スポーツ報知
記者発表をする(左から)津加宏・日本製鉄株式会社執行役員、庄野洋・鹿島アントラーズ代表取締役社長、小泉文明氏

◆明治安田生命 J1リーグ第16節 浦和―鹿島(31日・埼玉スタジアム)

 鹿島は浦和と1―1で引き分け、首位・F東京との勝ち点差を4に詰めた。30日のフリーマーケットアプリ大手・メルカリ(東京・港区)によるクラブの経営権取得発表から一夜明けての一戦。世界を見据えた鹿島のメルカリ傘下入りの背景を、岡島智哉記者が「読み解く」。

 メルカリ・アントラーズの“初陣”は最低限の勝ち点1となった。メルカリの小泉文明社長(38)が見守る中、後半43分に同点弾を許したが、首位との勝ち点差は4に詰めた。

 なぜ今、メルカリなのか―。それはクラブが「世界」に視野を広げたからにほかならない。2018年度の営業収入は神戸、浦和に次ぐクラブ史上最高の約73億3000万円で、前年度比約20億円増。それでもACLを制し、2度目のクラブW杯に出場した昨季の経験から、クラブは日本で突き抜けた存在になるだけでなく「世界」を見据えた体制を整える将来像を掲げた。庄野洋社長は「(営業収入)100億円を目指す。世界で戦うための最低限のライン」と宣言している。

 J最多20冠の鹿島は、勝利につながる言動だけが許されるクラブ。今回の経営陣の判断もしかりだ。「100億円のために勝利を目指す」のではなく、「勝利のために100億円を目指す」。業界騒然のメルカリの参入は、そのための手段の一つに過ぎない。

 1年で5人が欧州クラブに移籍する事態に直面したからこそ、「これからは育成」と話すジーコ氏の助言も受け、育成年代の強化を本格化する。寮施設を備えた新クラブハウスの着工は今年度の予算で行われ、早速“メルカリマネー”の出番となる。ユース出身の町田は「もちろんうれしいこと。育成からもっともっといい選手が出てこないと」と期待を寄せる。

 伊藤が「自分たちはピッチに集中するだけ」と語ったように、選手は試合を勝ちにいく。そして「『全ては勝利のために』という鹿島の哲学の中で、世界に出るためにビジネスをしっかり回し、そのお金でチームを強くする」と30日の会見で語っていた小泉社長はビジネスで勝ちにいく。

 どれだけの札束を積んでも得られない哲学・伝統が鹿島にはある。その礎を壊すことなく、ビジネス面で世界と戦う土壌を作りたい鹿島と、世界でのシェア拡大を目指すメルカリが手を組む。世界での勝利だけを目指した二人三脚の歩みが始まる。(岡島 智哉)

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