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「全体的に、とても好感の持てるチームだった。0-1で敗れた第1戦と比べて、アルゼンチンよりも優位に立っていた。とりわけ、前半は出色の出来だった」

 スペイン人指導者、ミケル・エチャリはU―24日本代表対U―24アルゼンチン代表の第2戦後、日本が3-0で勝利した内容を激賞した。

 エチャリは一昨年まで15年以上、バスク代表(FIFA非公認)の監督を務めていた。それはバスクサッカー界の名指導者に与えられる栄誉職に近いものだが(他にホセ・アンヘル・イリバル、ハビエル・イルレタ、ハビエル・クレメンテらも務めた)、当時最強を誇ったバルサの主力を中心としたカタルーニャ代表を破った戦いは、今も守備戦術の手本として語られている。ウナイ・エメリ(ビジャレアル監督)、フアン・マヌエル・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)、ガイスカ・ガリターノ(前ビルバオ監督)など、多くのバスク人指導者に影響を与えてきた。

 そのエチャリが、若き日本代表の戦いをほめちぎった。0-1と敗れた第1戦についても悲観論は述べておらず、現実的な指摘で、改善点を挙げていた。

「日本は第1戦からスタメン9人を入れ替えた。同じポジションで出たのは久保建英だけで、板倉滉もセンターバックではなく、ボランチでの出場だった。第1戦から中二日で、疲労面も考慮したのか。

 一方、アルゼンチンはそこまで選手を入れ替えていない。その分、体の動きは鈍かった。試合を通じて、後手に回っていた。

 序盤はお互いがやり合う形だったが、そこで日本が優位に立つ。自分たちがボールを持って、敵陣内に押し込んだ。第1戦よりも目に見えてその時間が増えた。相手の激しいプレーにも適応し、それを回避するだけの力を示したと言えるだろう。

 特記すべきは、ボランチで先発起用された田中碧だ。

 田中はバックラインからボールを受けると、強いプレッシングの裏を取ることができた。プレービジョンに優れ、体の動きで相手を外し、簡単にボールを前へつないでいた。相手が3人で囲んできても、それも無力化し、パスを出していた。ただのつなぎ役だけでなく、プレーの方向を変えて逆を取るロングパスは出色で、裏を狙った縦パスも見事だった。

◆ミケル・エチャリがU-24アルゼンチン第1戦を分析。「勝機はあった」分岐点とは?>>

 第1戦と比べて、日本は2列目から前へボールを運ぶことができるようになっていた。その点で田中の貢献度は高いだろう。前線の選手たちの技術やコンビネーションの高さを見せられるようになって、アドバンテージを得た。

 中でも、久保のプレーセンスは飛び抜けていた。動きのひとつひとつに意味があって、幅を使えるし、深さを取れる。プレースピードも際立ち、攻撃の中心と言える。

 日本はボランチに入った田中、板倉を中心に中盤で緩急を作って、アルゼンチンを翻弄。敵陣で攻め続ける機会が増えた。そこで相手が挽回しようとラインを押し上げ、前からプレッシャーに来たところだった。前半終了間際、瀬古歩夢が一気に裏を突く縦パスを林大地に入れ、先制点を決めた。林はゾーンで守る相手ディフェンスの鼻っ面を引き回すようなダイアゴナルランニングで抜け出すと、GKとの1対1も小さなフェイントを入れ、確実にネットを揺らしている」

 エチャリはそう言って、冷静に先制点を分析した。そして第1戦で改善点のひとつとして挙げていた「高さ」が補強されていたことが、快勝につながったことを明らかにしている。

「後半、アルゼンチンは第1戦で活躍した選手を投入し、勝負に出た。高い士気を取り戻し、序盤はいくつものセットプレーを奪い、勢いを得ている。しかし高さの優位を見せられず、得点できなかった。

 日本は第2戦、板倉が中盤に入って、高さを増強していた。第1戦ではセンターバックとして先制点で隙を許したが、ボランチとしては田中と連係し、キーマンとなった。とりわけ、ゴール前での高さで優位を与えていた。

 後半23、28分と、板倉は立て続けに久保のCKを頭で合わせて叩き込んでいる。完全に競り勝ったヘディングはすばらしかった。攻撃でも守備でも制空権を得たことが、リードを広げる結果になったのだ。

 その点、板倉はマンオブザマッチに値する活躍を遂げたと言えるだろう。

 しかしプレー改善のためにあえて言えば、後半は引き離したとはいえ、日本のプレーテンポは落ちていた。

その理由は、板倉が前めのポジションで田中がアンカーに近い形が定着し、距離感が悪くなったからだろう。板倉は得点を取ることができたし、田中もビルドアップでセンスを見せたが、2人ともボールを奪う機会が減って、ポゼッションもダウンし、内容的には前半より悪くなった。

 3点目が入って、試合はほぼ決した。しかし、日本はプレッシングでFWだけが突出し、いくらか秩序を失っていたのは反省の余地があるだろう。多くの選手を入れ替えたというエクスキューズはあるだろうし、勝利したことは何よりである。ただ、常に修正点を見つける作業も大事だ」

 歴戦のサッカー人だけに、エチャリは勝って兜の緒を締めた。

「偉大な勝利が、東京五輪の成功に結び付くことを心から願っている。日本の健闘を祈りたい」(U-24日本代表・選手評つづく)

小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki










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