コロナ禍でなくなった公式戦 静岡学園・加藤遼馬選手は「柔道」という長い道を進む

スポーツ報知
後輩と乱取りする加藤遼馬選手(左)

 静岡・浜松市を舞台にした河合克敏氏による柔道マンガの名作「帯をギュッとね!」に、こんなやりとりがある。「柔道って奥が深い」と驚く高校生に、倉田典善コーチが「深いっていうより長いってんだろうな。柔『道』っていうくらいだから」と返すのだ。

 このセリフを思い出したのは、1月に静岡学園高柔道部の加藤遼馬選手を取材したときだった。19年夏の全国高校総体個人戦60キロ級で2年生ながら3位入賞。「次こそ日本一になる」と練習に励み、翌年1月の県大会で優勝し、3月の全国高校選手権に備えた。しかしコロナ禍で大会は中止となり、その後の総体も全日本ジュニアも国体もなくなった。2年冬の試合を最後に、公式戦を行わないまま高校生活が終わることになり、「マジかっ! と思いました。信じられなかったし、悔しかった」。同期の仲間と愚痴をこぼし合った。

 そんなときに渡部直樹監督(48)に言われた言葉が「強くなりなさい」だった。高校がゴールじゃない。大学生や社会人になっても柔道人生は続いていく。大会どうこうよりも、いま自分を強くすることが大事だ。そう声をかけられ、悩みを吹っ切り、落ち込んだ気持ちを切り替えて練習に向かった。組み手の技術を磨き、得意の背負い投げだけでなく、新たな技の習得にも取り組んだ。

 6日に高校を卒業した加藤選手は強豪の日大に進学する。「目標は大学日本一。そして五輪に出て金メダルを取る」と前を向く。渡部監督も「心身ともに強くなりました。大学で大化けする要素はあります」と期待している。

 2年ぶりに開催された、20日の全国高校選手権で後輩の長沢篤希選手が優勝したことも「いい刺激になりました」。まだ「柔道」という長い道を歩き始めたばかり。今後の活躍に注目していきたい。(静岡支局・里見 祐司)

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