元幕内・友風 4度の手術乗り越え、春場所で1年4か月ぶりに復帰「新たなスタート」

スポーツ報知
友風

 大相撲の幕内経験者で7場所連続休場中の西序二段55枚目・友風(26)=尾車=が今月14日に初日を迎える春場所(両国国技館)で復帰する。2019年の九州場所2日目に右膝関節脱臼で途中休場。想像を絶するリハビリと4度の手術を経て、1年4か月ぶりとなる土俵に「これからが新たなスタートです」と心を震わせていた。

 土俵下に右膝から落下したのが悪夢の始まりだった。苦悶(くもん)の表情を浮かべながら救急車で福岡市内の病院に緊急搬送された。日本相撲協会には「右膝関節脱臼で靱帯損傷を伴う」の診断書を提出。さらに「治療期間は未定」が出口の見えないトンネルだった。師匠の尾車親方(元大関・琴風)も「最低でも1年以上はかかる」と肩を落とした。

 関節をはめ込む手術を受けた後は福岡市内の別の病院に入院。その後は大阪市内の病院に転院した。長い入院生活ではドリルで右膝に穴を開けるなど計4度の手術を受けた。「実は内側(の靱帯)が1本だけ残っていました。もし血管まで切れていたら復帰は無理だと言われました」と友風。

 ベットに横になりながら見上げた天井に引退の文字が見えた。心も折れてしまった。兄弟子の中村親方(元関脇・嘉風)には「引退したい」と相談した。しかし、中村親方は「焦る必要はない。じっくりと治療しよう」とやさしく背中を押してくれた。

 入院中に知り合った脳性マヒで苦しむ3歳の男の子の屈託のない笑顔が前を向かせてくれた。「励みになりました。ボクより苦しいはずの男の子が明るく振る舞っている。下を向いていてはダメだと思いました。普通は2年もかかると言われましたが、自分は回復が早かったみたいです」。尾車親方は1年4か月を「奇跡ですね」と表現した。

 昨年3月に帰京して歯を食いしばってリハビリを開始。同12月からは部屋での稽古を再開した。「まだ膝が震えますし、(右)足首も思うように動きません。それでも矢後関や天風さん、栄風さんと1日10番を目標に稽古をしてきました」。不安は残る。それでもトンネルを抜けて復活の階段の入口に立つことができた。体重は全ての筋肉が落ちて、180キロから150キロまで落ちてしまったが、トレーナーと相談しながら食事療法などで170キロぐらいまで戻すことができた。

 「当面の目標は土俵に戻ることでした。それが恩返しになりますから。その後は幕内に復帰ことですけど、焦るつもりはありません。自分なりのペースで階段を上がっていきたいですね」。友風の通算成績は100勝49敗70休。2日目以降になる101勝目が“第2の相撲人生”のジャンピングボードになる。(今関 達巳)

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