【五輪の直】卓球「WTT」は不安残る船出

スポーツ報知
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 卓球のワールドツアーが今年から「WTT」として枠組みを一新し、2月28日開幕のコンテンダー・ドーハ大会から始動した。五輪代表も参戦する今年初の国際大会は、今後への懸念が残る船出にもなった。WTTは五輪や世界選手権と同じ格付けのグランドスマッシュを頂点にコンテンダーまで5段階に分かれ、年間最大30大会を行う構想だ。

 大きな課題は情報の不透明さにある。関係者によれば今大会は開催通知から申請の締め切りまで数日しかなく、エントリー状況も開示されなかった。日本協会は限られた情報の中で東京やパリ五輪の強化を見据えて選考基準を作り、1協会あたりの参加人数の規定に従って申請したが、全体のエントリーが多かった男子は基準を満たした若手が出場を認められなかった。蓋を開けるまで結果が分からないため、代わりの選手を派遣できず、機会の損失につながった。一方、女子では上限を超える人数の参加が認められた国もあった。

 高額賞金を設定するWTTはスター選手に出場を促し、スポンサーを集めるため、格付けの高い大会は上位者が自動登録されるなど世界ランク偏重の仕組みとなっている。ランクが低い選手にとっては下部大会でも出場が認められるか予測できない状況が続けば、機会を得ること自体が難しくなる。宮崎義仁強化本部長も「全ての登録会員に公平公正にチャンスを与えられない」と疑問を呈す。協会内では公平性を欠く世界ランクを五輪や世界選手権の選考要件から外さざるを得ないとの見方も出ている。

 日程面も4月以降は白紙のままだ。4月に中国で開催するとの情報が流れていたが、5月に延期と判明したのは2月下旬。選手はカタールへの出発直前まで隔離期間も考慮して直接中国に入る可能性に備え、1か月分以上の荷物を準備していたという。ただ、それも正式発表はされていない。

 五輪直前の大幅なシステム変更に現場は翻弄(ほんろう)され、二転三転するスケジュールは各国のリーグや強化に打撃を与えている。日本やドイツなどは国際連盟に抗議文を出したと聞く。選手が振り回される状況が今後改善されることを願いたい。

 ◆林 直史(はやし・なおふみ)1984年8月22日、愛知県生まれ。36歳。明大から2007年入社。プロ野球、サッカーなどを経て17年から五輪競技担当。18年平昌五輪を取材。柔道、卓球、スピードスケートなどを担当。

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