全日本大学サッカー選手権の代替大会で、神奈川県リーグの東海大が、8人のJリーグ内定者を擁する法大に競り勝ち、20年ぶりの全国制覇を果たした。県リーグからの全国優勝は初めて。

前半は、法大にボールを保持され防戦一方となったが、後半に入ると果敢に前線からプレスをかけ、攻めては得意のロングスローとセットプレーでリズムをつかみ始めた。後半27分にCKの流れから、ゴールまで混戦となり、DF水越陽也(3年)が右足で押し込み先制。法大の猛攻をしのぎ、虎の子の1点を守りきって頂点に登った。

昨年は関東2部から降格し、神奈川県リーグで戦った。指揮官も8年ぶりに今川正浩監督(60)が現場に復帰した。東海大の軸である「堅守」を再び見つめ直した。「自分たちが自信を持てるようなストロングポイントを見いだそうと。粘り強い守備と走力は去年からベースとなるものがあった。練習から、関東リーグに戻るなら、スピードと連続性が必要だと。粘り強い守備を90分やるなら走力も必要だと理解してくれた。全国大会でも、強豪チームと対戦する上で、自分たちが自信をもってできるように仕上げていってくれた」と振り返った。

ボールを保持しパスでゴールを奪う「美しいサッカー」とは正反対のスタイルだ。守備と走る練習に重きを置き、選手からは一時、反発もあったという。だが、DF面矢行斗(4年)は「(公式戦で)いい守備をすれば、必ずと言っていいほどいい攻撃につながった実績があった。それでみんなが納得して力が注げた」。さらに、面矢は欧州でストーミング(前線からの激しい守備)のチームがボールを保持するチームを破っていることを挙げ「今年J2に昇格した2クラブもポゼッション率は低い。海外でも、ポゼッションに対してストーミングのサッカーが戦えるのは分かっていた。自信をもってやれてよかった。大会中にも、ポゼッションの相手にストーミングで覆していこうと話していて。それを実現できて良かった」と胸を張った。

部員は東海大仰星、東海大相模など付属高出身が多く、ユースはほとんどいない。今大会は、2回戦でJ内定者12人を擁する明大、準決勝では強豪の順大を撃破。決勝では大学サッカー屈指の技術力を誇る法大を破った。県リーグからの堂々の下克上だ。面矢は卒業後、J2栃木に進む。「東海大のブランドで優勝できて良かった」。後輩に大きな置きみやげを残しプロの世界へと羽ばたく。【岩田千代巳】