日本中のサッカー少年・少女たちは、今すぐボローニャのDF冨安健洋のプレーを見るべきだ。できればDFもFWもチーム全員で。
イタリアで2年目のシーズンを戦う冨安の進化は、2021年に入ってさらに加速している。
1月16日のセリエA第18節ベローナ戦において1-0の完封勝ちに貢献した働きぶりは、今シーズン出場したなかの白眉だった。
9試合ぶりに勝ち点3をもぎ取ったゲームに冨安は左CBとして先発し、リーグ中位集団を引っ張る難敵ベローナの攻撃陣をシャットアウト。試合を中継した現地実況も地元紙も「トミヤス・ペルフェット(冨安、完璧)!」と揃って絶賛するほどの充実ぶりだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/066e26cefa42e759c4f00e73d1e006265628a9d2
イタリアで2年目のシーズンを戦う冨安の進化は、2021年に入ってさらに加速している。
1月16日のセリエA第18節ベローナ戦において1-0の完封勝ちに貢献した働きぶりは、今シーズン出場したなかの白眉だった。
9試合ぶりに勝ち点3をもぎ取ったゲームに冨安は左CBとして先発し、リーグ中位集団を引っ張る難敵ベローナの攻撃陣をシャットアウト。試合を中継した現地実況も地元紙も「トミヤス・ペルフェット(冨安、完璧)!」と揃って絶賛するほどの充実ぶりだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/066e26cefa42e759c4f00e73d1e006265628a9d2
20代前半とは思えぬ風格を漂わせる冨安健洋。元イタリア代表DFも絶賛
いったい冨安の何が、完璧だったのか。
「“読み”だよ。プレーの先を読んで先手をとる能力や一つひとつのプレー精度の高さは驚くべきものだよ」
驚嘆の声をあげたのは、試合中継をしていたイタリアSKYの解説者、アレッサンドロ・コスタクルタだ。
1980年代中盤から2007年の引退までミランやイタリア代表で歴戦のDFとしてならした彼は、時代を代表する名手や猛者たちを引き合いに出しながら、「確かトミヤスはふた月前に22歳になったばかりのはず……」とつぶやき、末恐ろしい選手だと刮目した。
とにかく、相手にパスを通させない。
ベローナの中盤から自陣ペナルティーエリアへ上下左右に放たれるあらゆるパスを、冨安はことごとく止め、弾き返し、淡々とクリアした。“1-0(ウノ・ア・ゼロ)”での白星も、昨秋のクロトーネ戦以来だった。タイムアップの笛を聞いた冨安はCBダニーロやGKスコルプスキらと肩を組み、会心の笑みを見せた。
DFの仕事は形に残らないと言われるが、若き守備職人の凄さはきちんと数字にも現れている。前半戦がほぼ終わったセリエAで「ボール奪取及びクリア数ランキング」の1位に輝くのは、リーグ集計で190回を数える冨安だ(第18節終了時点)。
攻め込まれる頻度の高い地方クラブの選手に偏りがちな数字とはいえ、優れたDFの指標である同ランキングは2位にローマのイバニェス(167回)、3位にフィオレンティーナのミレンコビッチ(157回)、さらに6位(141回)には僚友のベテランCBダニーロが続く。
名だたる同業者たちを押しのけてランクトップに立つ冨安は、攻撃面でも長足の進歩を遂げている。
第16節ウディネーゼ戦(2-2)では19分、FKに合わせて高い打点のヘディング弾を突き刺し、先制点を奪った。
昨年のクリスマス前、第14節アタランタ戦(2-2)で決めたゴールは鮮やかの一言だ。2点をリードされた劣勢の73分、中盤中央でボールを受けた冨安は、右サイドのFWオルソリーニに一旦預けて自らは一気に前線へ。折り返しを受けゴール前でGKと1対1になると、冷静に体を浮かしながら右足で流し込んだ。
ボールを受けてからわずか9秒で決めたゴールは、本職ストライカーもかくやの一撃。まさにお手本のようなゴールで反撃の口火を切った冨安は、クラブHPのファン投票によるマン・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。
右SBとして起用された1年目の昨季が“攻撃の起点”止まりだったとしたら、CB起用がメインの今季はフィニッシュにも積極的に絡んでいる。
そして何より冨安は、今季チームで唯一ここまで全20試合(セリエA=18試合+コッパイタリア=2試合)にフル出場しているタフネス・プレーヤーなのだ。
FWバロウとMFソリアーノも全20試合に出場しているが、途中交代歴のある彼らは冨安の総出場時間1830分には及ばない。
「“読み”だよ。プレーの先を読んで先手をとる能力や一つひとつのプレー精度の高さは驚くべきものだよ」
驚嘆の声をあげたのは、試合中継をしていたイタリアSKYの解説者、アレッサンドロ・コスタクルタだ。
1980年代中盤から2007年の引退までミランやイタリア代表で歴戦のDFとしてならした彼は、時代を代表する名手や猛者たちを引き合いに出しながら、「確かトミヤスはふた月前に22歳になったばかりのはず……」とつぶやき、末恐ろしい選手だと刮目した。
とにかく、相手にパスを通させない。
ベローナの中盤から自陣ペナルティーエリアへ上下左右に放たれるあらゆるパスを、冨安はことごとく止め、弾き返し、淡々とクリアした。“1-0(ウノ・ア・ゼロ)”での白星も、昨秋のクロトーネ戦以来だった。タイムアップの笛を聞いた冨安はCBダニーロやGKスコルプスキらと肩を組み、会心の笑みを見せた。
DFの仕事は形に残らないと言われるが、若き守備職人の凄さはきちんと数字にも現れている。前半戦がほぼ終わったセリエAで「ボール奪取及びクリア数ランキング」の1位に輝くのは、リーグ集計で190回を数える冨安だ(第18節終了時点)。
攻め込まれる頻度の高い地方クラブの選手に偏りがちな数字とはいえ、優れたDFの指標である同ランキングは2位にローマのイバニェス(167回)、3位にフィオレンティーナのミレンコビッチ(157回)、さらに6位(141回)には僚友のベテランCBダニーロが続く。
名だたる同業者たちを押しのけてランクトップに立つ冨安は、攻撃面でも長足の進歩を遂げている。
第16節ウディネーゼ戦(2-2)では19分、FKに合わせて高い打点のヘディング弾を突き刺し、先制点を奪った。
昨年のクリスマス前、第14節アタランタ戦(2-2)で決めたゴールは鮮やかの一言だ。2点をリードされた劣勢の73分、中盤中央でボールを受けた冨安は、右サイドのFWオルソリーニに一旦預けて自らは一気に前線へ。折り返しを受けゴール前でGKと1対1になると、冷静に体を浮かしながら右足で流し込んだ。
ボールを受けてからわずか9秒で決めたゴールは、本職ストライカーもかくやの一撃。まさにお手本のようなゴールで反撃の口火を切った冨安は、クラブHPのファン投票によるマン・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。
右SBとして起用された1年目の昨季が“攻撃の起点”止まりだったとしたら、CB起用がメインの今季はフィニッシュにも積極的に絡んでいる。
そして何より冨安は、今季チームで唯一ここまで全20試合(セリエA=18試合+コッパイタリア=2試合)にフル出場しているタフネス・プレーヤーなのだ。
FWバロウとMFソリアーノも全20試合に出場しているが、途中交代歴のある彼らは冨安の総出場時間1830分には及ばない。
「両SBができるし、CBもできる。頭も使える」
「とんでもなくすごいな、奴は」
ベローナ戦後、中継番組の試合後インタビューに応じたボローニャのミハイロビッチ監督は、やれやれといった体で認めた。
手塩にかけて育てている怪物DFをまだ満天下に知られたくない、もう少し手許に抱えておきたい、といった指導者としての欲がにじみ出がちな闘将は、そもそも個人名を挙げて褒め称えることを嫌う。
だが、冨安にベタ惚れの旧友コスタクルタからどう思うかと執拗に迫られ、根負けしたように「メラビリオーゾ(=マーベラス)」という、滅多に使われない最高級の褒め言葉を使った。
「弱点があるとしたら、ずる賢さや意地の悪さが足りないところだ。トミヤスは悪い考えができない。(生真面目とされる)日本人だからな。だが、SBとして右も左もできるし、CBもやれる。両足が使えてスピードもあり、(空中戦で)頭も使える。重要な選手だ。日本人とは思えん(笑)」
最後の一文は指揮官得意のシニカル・ジョークだが、これを偏見だと騒ぎ立てる必要はない。ピンチとなれば、冨安が平然とイエロー覚悟の戦術的ファウルを実行できることを指揮官はちゃんと知っている。
冨安の最大の売りは188cmの当たり負けしない強靭なフィジカルと広いストライドから繰り出されるスピードだろう。
しかし、ほぼ1年前に冨安へ話を聞いたとき、彼からこう訂正された。
「五分五分で(相手と)バチンと当たるときというのは、僕の感覚だと遅れているんです。僕自身は体の強さというより、スピードで勝負していくべきだと思っているので。ただの足の速さではなくて、予測だったり判断だったり、そのスピードが大事なんです」
「予測して先を読んで、相手の先手先手をとって守る。そういう方が僕には合っている。センターバックではそうしないとうまく守れません」
試合中、冨安の頭の中では数秒先に起こりうるプレーが常に目まぐるしくシミュレートされているのだろう。自身の肉体的アドバンテージに甘んじることなく、思考する速度が大事だと訴えて研鑽してきた若武者は、セリエAのDFとしてトップレベルに手をかけようとしている。
1月24日、ボローニャは王者ユベントスとのアウェーゲームに臨む。
第18節で仇敵インテルとの“イタリア・ダービー”に0-2で完敗したユーベとC・ロナウドは、その鬱憤を晴らすべくボローニャに襲いかかってくるだろう。
ユーベ戦でカンピオナートを折り返した後には、首位ミランとの難ゲームも控える。
「今日は試合前にチーム全員で『100%からさらにもうワンプッシュしよう』と言い合った。辛抱して、苦しんでも最後に勝つ。俺たち、ようやく監督好みのチームになってきた」
ベローナ戦で自信を取り戻したチームをMFソリアーノが代弁する。今や完全にチームの守備の要となった冨安が、今シーズン中にどこまで進化するのか、見当もつかない。
冨安に注目するのは日本の少年ファンばかりではない。彼ら以上に、欧州中のクラブの補強担当者たちが、イタリアで台頭する冨安へ熱視線を送ることだろう。
ベローナ戦後、中継番組の試合後インタビューに応じたボローニャのミハイロビッチ監督は、やれやれといった体で認めた。
手塩にかけて育てている怪物DFをまだ満天下に知られたくない、もう少し手許に抱えておきたい、といった指導者としての欲がにじみ出がちな闘将は、そもそも個人名を挙げて褒め称えることを嫌う。
だが、冨安にベタ惚れの旧友コスタクルタからどう思うかと執拗に迫られ、根負けしたように「メラビリオーゾ(=マーベラス)」という、滅多に使われない最高級の褒め言葉を使った。
「弱点があるとしたら、ずる賢さや意地の悪さが足りないところだ。トミヤスは悪い考えができない。(生真面目とされる)日本人だからな。だが、SBとして右も左もできるし、CBもやれる。両足が使えてスピードもあり、(空中戦で)頭も使える。重要な選手だ。日本人とは思えん(笑)」
最後の一文は指揮官得意のシニカル・ジョークだが、これを偏見だと騒ぎ立てる必要はない。ピンチとなれば、冨安が平然とイエロー覚悟の戦術的ファウルを実行できることを指揮官はちゃんと知っている。
冨安の最大の売りは188cmの当たり負けしない強靭なフィジカルと広いストライドから繰り出されるスピードだろう。
しかし、ほぼ1年前に冨安へ話を聞いたとき、彼からこう訂正された。
「五分五分で(相手と)バチンと当たるときというのは、僕の感覚だと遅れているんです。僕自身は体の強さというより、スピードで勝負していくべきだと思っているので。ただの足の速さではなくて、予測だったり判断だったり、そのスピードが大事なんです」
「予測して先を読んで、相手の先手先手をとって守る。そういう方が僕には合っている。センターバックではそうしないとうまく守れません」
試合中、冨安の頭の中では数秒先に起こりうるプレーが常に目まぐるしくシミュレートされているのだろう。自身の肉体的アドバンテージに甘んじることなく、思考する速度が大事だと訴えて研鑽してきた若武者は、セリエAのDFとしてトップレベルに手をかけようとしている。
1月24日、ボローニャは王者ユベントスとのアウェーゲームに臨む。
第18節で仇敵インテルとの“イタリア・ダービー”に0-2で完敗したユーベとC・ロナウドは、その鬱憤を晴らすべくボローニャに襲いかかってくるだろう。
ユーベ戦でカンピオナートを折り返した後には、首位ミランとの難ゲームも控える。
「今日は試合前にチーム全員で『100%からさらにもうワンプッシュしよう』と言い合った。辛抱して、苦しんでも最後に勝つ。俺たち、ようやく監督好みのチームになってきた」
ベローナ戦で自信を取り戻したチームをMFソリアーノが代弁する。今や完全にチームの守備の要となった冨安が、今シーズン中にどこまで進化するのか、見当もつかない。
冨安に注目するのは日本の少年ファンばかりではない。彼ら以上に、欧州中のクラブの補強担当者たちが、イタリアで台頭する冨安へ熱視線を送ることだろう。
予測力もスゴイけど、それを体現出来る身体能力がまたずば抜けてる