ガンバ大阪の小野忠史社長(59)と、セレッソ大阪の森島寛晃社長(48)の対談が実現した。コロナ禍でも結果を出せるクラブ運営とは-。

昨年を振り返ってもらった。【取材、構成=益子浩一】

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スポーツ界は今も、新型コロナウイルス対策に頭を悩ませている。昨年、収入面でもクラブ運営は困難を極めたことだろう。Jリーグでは経営危機に立たされているクラブもある。そんな中で、両社長はクラブの先頭に立って、難局を乗り切ろうとする姿があった。

小野社長 夏場に5000人を上限に収容できるようになり、感染対策を徹底せなアカンということで、客席にテープ貼りをしたんです。サッカーで世の中を明るくしたかった。中断期間中は入場料収入もありませんし、経営的にも大変やった。人を雇える余裕はない。それなら、みんなで力を合わせてやろう、と。社員総出ですよ。アカデミーのコーチも、ユースの選手も、私も。1席につき両脇3席にテープを貼って間隔を取る作業を、スタジアムの全席にしたんです。みんな、汗だくでした。

森島社長 うちもテープ貼りはしました。4万席以上を区切るのは、かなり大変でした。朝から晩までやってくれたスタッフもいます。それに、「なんかせなあかん!」というプロジェクトを立ち上げたんです。試合だけでなく、社員も会社に来られない時期があったので。知恵を出し合おうと。本当に試合ができるかどうか、不安を抱えながらの再開でもありましたし。準備をしていく中で、みんなで思いを共有しようと団結したと思います。

今後もコロナとの戦いは続く。特に経営面で、その手腕が問われる。

小野社長 1番大きかったのは年間パスですよね。昨年は約9000席を払い戻しせざるを得なくなった。うちは年間パスの約6000席が個人のお客様なのですが、調べるとそのうち2割の方が昨年は1度もスタジアムに来られていない。やはりコロナ感染が怖いので、密集したイベントから足が遠ざかっているということなんです。

森島社長 そうなんです。観客制限が最初の5000人から、(収容人員の)50%に拡大されて感じたのは、1万人を集めることが大変になっていること。皆さん、移動に慎重になっているんですよね。スタジアムは安全だという対策を、もっとやらないといけないと思うんです。以前のような平常な試合会場に戻るのは時間がかかりそうです。

厳しいクラブ運営で、選手に与える影響はどうか。

小野社長 モチベーションを維持し、コロナ禍で戦ったシーズンであり(選手の)体調管理に苦慮しました。Jリーグは昨年、プロ野球のように、試合数を減らしていないんです。選手には過密日程になった中でも、「頑張れ!」と言い続けた。選手の士気に影響が出ないように、最大限の配慮をしました。

森島社長 コロナ禍でも選手は勝負をしている。プレーで勇気を与えるという思いで取り組んでいる。サッカーができる当たり前が、当たり前でなくなっても、プレーで勇気を与えるという思いはこれからも続いていく。

◆感染予防対策 対談は朝日新聞大阪本社・アサコムホールを利用。アクリル板で仕切りをつけ、新型コロナウイルス感染予防を徹底して実施しました。