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「上で通用する自信はある」道教大岩見沢のプロ志望FW下田友也、強行出場で爪痕残す“大学ラストプレー”弾

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北海道教育大岩見沢校FW下田友也(4年=札幌U-18)

[1.8 #atarimaeniCUP2回戦 北海道教育大岩見沢校 1-4 甲南大]

 大敗ムードの後半アディショナルタイム、一矢報いるゴールを沈めたのは怪我に苦しんできた背番号10だった。北海道教育大岩見沢校FW下田友也(4年=札幌U-18)はプロ志望。失った1年をなんとか取り戻すべく大学最後の大会に臨み、ストライカーとして爪痕となる唯一の結果を残した。

 前半に喫した2失点がのしかかるハーフタイム明け、道教大岩見沢の反撃はエースに託された。

「リードされていたので絶対逆転してやるという気持ちで入った。でも自分が点を取るにしても、守備にしても、まずはチームのためにしっかり走ろう、と」。昨年12月上旬に全治2か月の脱臼を負い、大会5日前になかば強行的に全体練習へと合流したばかり。それでも下田にはピッチに立たなければならない理由があった。

「自分はJリーガーを目指してやっていたけど、コロナや怪我の影響で練習参加もできなくて、この試合で声をかけてもらえるのを待っていた」。プロ入りを期して迎えた大学ラストシーズンだったが、新型コロナウイルスの影響で公式戦が中断。再開直後からは肉離れや足首の痛みによる離脱が長期化し、この大会がスカウトにアピールするための最初で最後のチャンスだった。

「監督にも先のことを考えるなら出なくてもいいと言われたけど、出ないと先も決まらない。絶対出たいという気持ちだった」。そんな下田の意向も踏まえつつ、安部久貴監督も「コンディションがだいぶ良くなっていた」とピッチに送り込むことを決断。「親心的なものがあるとすれば、どのタイミングで出すか」。プレー時間を制限しつつも、あくまでもチームに欠かせない戦力として起用法を考えた。

 この日は、そのタイミングがハーフタイム明けだった。「1回戦の高知大戦は下田を出すのが遅れてしまい、全体の運動量が落ちて前で孤立していた」(安部監督)という反省を活かし、より早い時間帯に投入。その結果、ポストプレーや裏抜けで深さをつくるエースが攻撃に絡むことができ、チーム全体の布陣も押し上げられるようになった。

 もっとも対戦相手の甲南大も関西3位の強豪。立ち上がりから圧力をかけられると、後半4分にセットプレーで3失点目。さらに15分すぎから続いた決定機が次々に精度を欠くと、32分には北海道出身のプロ内定FW木村太哉(4年=札幌大谷高)にダメ押しゴールを決められ、試合の行方は決定的となった。

 ところが、最後まで諦めない道教大岩見沢も0-4からスコアを動かした。後半アディショナルタイムに攻守の切り替えが続いた直後、セカンドボールを拾ったMF縄田脩平(2年=浦和ユース)からのスルーパスが前線に通ると、タイミング良く抜け出したのは下田。GKとの駆け引きからニアポスト脇へ流し込み、限られた出場時間の中で大会初ゴールを決めた。

 それでも試合後、下田の表情は満足とはほど遠いものだった。

「その前にチャンスがあってそこで決められなかった。1点取るのが遅かったという悔しさ、情けなさがある」。結果としては1-4で敗戦。今大会で自らをアピールする機会が絶たれたということ以上に、大学サッカー生活が志半ばで終わったことを悔やんだ。

 だからこそ自らの将来は、自らの力で切り開いていく気概を見せた。

「180cmあるんですが高さだけでなく、今日みたいに裏抜けもできるし、今年は体重も増やしてポストプレーにも磨きをかけてきた。また何よりも決定力、必ず点を決めるというところは自分の持ち味」。そうセールスポイントを語った下田は「セレクションやキャンプに参加できるところを探して、なんとかアピールしたい」と前を見据えていた。

 道教大岩見沢からは今季、下田だけがプロ志望。ここからはさまざまな人の思いや期待も背負いながら戦うことになる。

 すでに就職が決まっているMF鈴木理久(4年=札幌U-18)もその一人だ。「小4の全道大会で仲良くなって、あっちが伊達中で、こっちは苫小牧のクラブチーム(FCユーベル)。中学でも連絡を取っていて、高校で一緒にコンサに入って運命を感じました」。10年以上の付き合いとなった友との思い出も語った下田。「上で通用する自信はあるので、自分の可能性を信じて、諦めずに上まで行きたい」。新たな戦いはこれから始まる。

(取材・文 竹内達也)
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