【巨人】菅野智之、お金が全てじゃない…記者が見た覚悟のメジャー挑戦

スポーツ報知
巨人・菅野智之投手

 ポスティングシステムでメジャー挑戦を目指していた巨人・菅野智之投手(31)の残留が8日、決まった。

 メジャー球団との交渉期限は米東部時間7日午後5時(日本時間午前8時)に設定されていたが、期限の数分前までギリギリの交渉が行われ決断を下した。

 メジャーへの夢はある。ただ、行くことがゴールじゃない。中途半端な契約だとしたら今年は行かないことは、渡米前からはっきり決めていた。NPBで数々の記録をつくった日本のトップ選手が、足元を見られるような中途半端な契約で行けば、今後メジャーを目指す選手の“評価基準”にも影響するだろう。

 ここまで支えてきてくれた周囲の人たちへの思いもあった。自分のことだけでなく、本当にさまざまなことを熟考した。多くを背負い、本人にしか分からない思いもあっただろう。もちろん野球選手という職業の評価は年俸になるが、菅野の決断理由が、お金が全てじゃなかったということは強調しておきたい。

 当初から菅野が残留もあるとしていたのは、コロナ禍で米球界があまりにも不透明だったため。どちらかの年俸をつり上げる“交渉材料”として天びんにかけていた訳でもない。損得勘定でメジャーと日本を比較する考えも一切なかった。

 元日に渡米したが、現地は移動制限があった。メジャー球団が直接会って菅野の気持ちを聞くことが困難な中で「巨人が4年契約を準備」「菊池雄星の4年58億円以上を要求」などと米メディアがツイッター等で次々に発信。本来は交渉中に公になるべきではない情報が、真偽が定かでない段階で、真実であるかのように拡散された。

 そもそも、巨人はオプトアウト(契約見直し)条項込みでいつでもメジャー挑戦できる4年契約を準備はしていたが、渡米前に菅野に金額提示はしていないという。残留が決まり、菅野は1年1年勝負してきたこれまで同様に、今年も単年契約で勝負する意向だ。

 メジャーはコロナ禍で財政面で苦しく、今オフは例年以上にフリーエージェント(FA)移籍市場の動きが遅い。現在、最も高いFA契約はホワイトソックスからメッツ入りしたジェームズ・マキャン捕手の4060万ドル(約42億円)。田中将大投手やトレバー・バウアー投手ら大物選手に動きがない段階で、交渉期限のある菅野に、本来の評価を反映した条件を準備できる球団は少なかった。

 難しい状況の中で、今年自分はアメリカでプレーすべきか、そうでないか熟考した。覚悟を決めて渡米した。夢の舞台だからといって必ず行かなければいけないルールはない。どんな条件でも行くということだけが覚悟でもない。メジャーへの強い気持ちを持っていた中、複数球団のオファーを受けた。夢への切符が目前にありながら交渉で妥協しなかったのは、相当な覚悟と意思の強さを感じた。

 「後悔のない選択をしたいです」と話していた菅野。ベストの選択として出した答えが残留だった。(巨人担当・片岡優帆)

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