サッカー日本代表がメキシコに完敗した。早朝の5時キックオフ。眠い目をこすりながらテレビ観戦したファンは、ガッカリしただろう。日本の敗戦を見届けて、会社に向かった人、学校に向かった人…。慣れない時間の朝5時開始に民放テレビはつかず、NHKの衛星放送で中継しただけだ。収入面は約2億円の損失になるという。

メキシコ戦の交渉時、日本協会は日本時間夜の時間帯を希望した。しかしメキシコがこの早朝時間を強く主張したため、収入減、ファンへの迷惑をのみ込んで受諾した。せっかくのFIFAランキング11位との対戦。首を縦に振らなかったら試合が成立しない危険性があったため、譲歩した。負けはしたが強い相手と戦ったことで、選手も監督も問題を再認識できた。間違いなく来年の東京五輪、W杯アジア予選につながるだろう。

一方、Jリーグのルヴァン杯決勝はどうか。7日の試合が延期になり、Jリーグは代替日を探した。12月26日、来年1月3日と4日の3日間を候補日として国立競技場を仮予約した。トップ幹部で協議し、1月4日午後2時キックオフで決定。Jは代替日決定の際の理由として、コロナ禍でACL(カタール)からクラブが帰国した際に2週間の隔離問題が解決できない可能性があることなどを挙げた。

今後の政府方針にもよる話なので、確実に開催できる日を選定した。条件付きで試合日を決めることもできたが、村井満チェアマンは「決勝戦のチケットは売り出して1時間で2万5000枚が売り切れた。チケットを買ってくれたサポーターのために早く、スッキリとした形で決めてあげたかった」とも話した。

候補日だった12月26日は土曜日、1月3日は日曜日、1月4日は仕事始めとなる月曜日。唯一、4日だけが地上波の生中継ができる。他の日は年末年始の特別編成で、放送枠を開けることは不可能。ファンのために、仕事始め、始業式の昼に試合を組むとは、聞いたことがない。仕事をしている人や学生は、その時間帯にはスタジアムにも行けないし、テレビも見られない。生中継ができるため露出は増えるはずで、スポンサーへの気遣い、忖度(そんたく)ではなかったのか? と疑問符がつく決定だ。

しかも選手会は年内の開催を希望していた。シーズン終了後、来季に向けた休養は選手寿命にもかかわる問題。1年でも長くプレーしたいと思うJリーガーにとって休養はとても大事で、翌シーズンのパフォーマンスにも影響する。プレーヤーズファーストはどこに行ったのか。

チーム強化を第一に考えて試合を組んだ日本協会と、露出を優先させたと思われるJリーグ。日本サッカーをけん引する2つの大きな団体の温度差を埋めていくことが今後、質を高めることにつながるのではないだろうか。【盧載鎭】