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「歴史を変えたい」明桜が新屋を延長戦で撃破。27年ぶり、校名変更後初の全国まであと1勝!

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延長前半7分、明桜高MF田村仁志が決勝ヘッド

[10.22 選手権秋田県予選準決勝 明桜高 1-0(延長)新屋高 ソユスタ]

 明桜が27年ぶり、校名変更後初の全国出場へ王手を懸けた。第99回全国高校サッカー選手権秋田県予選は22日、準決勝を行い、明桜高新屋高が激突。延長前半7分にMF田村仁志(2年)が決勝点を決め、明桜が1-0で勝った。明桜は2年ぶりの準決勝突破。秋田経法大付高時代の1993年度以来となる全国出場を懸けて、決勝(24日)で秋田工高と戦う。

 国見高(長崎)などでコーチを務めてきた原美彦監督就任3年目。地元・秋田の選手たちに神戸や名古屋、仙台というJ育成組織出身の選手たちが加わり、「秋田の勢力図を変える」ことを目指してきた明桜が全国王手だ。ボールを保持しながら前に出るスタイルの明桜だが、この日の前半はキレイにサッカーをしようとしすぎたが、足下へのパスが増えてしまい、新屋に対応されてしまう。

 一方の新屋は本来、ポゼッションを得意とするチームだが、相手をリスペクトしての戦いだった。まずは守りを固め、良い形でボールを奪った際には左足から質の高いパスを配給していたMF高橋慶樹(2年)や180cmレフティー・FW佐藤琉誠(3年)がサイドへ展開。決して回数は多くなかったものの、左のMF田中琉喜(3年)がクロスまで持ち込んでいた。

 明桜も中盤の要・MF内藤蒼空(2年)とパスで違いを生み出す田村が前向きにボールを動かし、1トップのFW齋藤光優(3年)がよくボールを収めていたが、前半に関してはなかなかリズムが好転せず。ミドルシュートの本数こそ増やしていたものの、不満の残る内容だった。

 それでも、ハーフタイムに原監督から「相手の背後を狙ってダイナミックに行こう」と指示を受けた明桜は人の動きも増えて、攻撃の迫力が向上。長短のパスから次々と仕掛けていく。また10分にFW佐藤拓海(1年)、23分にMF佐藤嵐(2年)を投入し、個でサイドを攻略する回数も増やしていった。

 だが、新屋はサイドを突破されてもゴール前で譲らず、決定打を打たせない。中盤でもMF藤原貴大主将(3年)らが食い下がり、交代出場の俊足FW明石怜也(3年)らが鋭く背後を狙っていた。明桜は後半アディショナルタイム、CB長江慶次郎(2年)のフィードから佐藤嵐が左サイドをドリブル突破。佐藤拓がDFをかわして左足を振り抜いたが、新屋DFがシュートブロックし、0-0のまま延長戦へ突入した。

 新屋の楢岡直志監督は「プラン通りにハマりました。でも(攻撃時に)1個収めることができなかった」と残念がる。カウンターを幾度か発動していたものの、コントロールがわずかに乱れるなどフィニッシュの本数を増やすことができなかった。

 迎えた延長前半7分、明桜が新屋のゴールをこじ開ける。左のCB長江が前向きにボールを持つと、GKとDFラインの間へ左足フィード。アイコンタクトでそのスペースへ飛び出した田村が頭で決勝点となる一撃を流し込んだ。

 新屋は失点後にも素晴らしい守りがあったが、なかなか相手ゴール前までボールを持ち込めないまま試合終了。原監督が「後半以降の時間は僕が見ていても、凄く面白かった」と評した明桜が、決勝へ駒を進めた。

 明桜は原監督就任1年目に選手権予選で準優勝。昨年11月に開催された県新人戦では明桜に名を変えてから初の県タイトルを獲得した。まだまだ青森山田高(青森)や尚志高(福島)のような個はいないかもしれないが、チームは全員で秋田制覇、全国上位へ挑戦。左SB鎌田太耀主将(3年)が「今までずっと一年間繋ぐサッカーをしてきた。苦しい状況でもあまり蹴り出さない。繋げるところは全部繋いでサイドを起点に攻撃していく」ことを目指してきたチームは、戦い方が明確に確立されてきている。

 原監督は「下級生も物怖じせずに。それも僕らの色なんじゃないかと思いますけれども」と微笑。原監督とともに3年間で新たな歴史を構築してきた3年生や1、2年生たちが全国切符を勝ち取るか。2年前の県準優勝も知る鎌田は「2年前の借りを返せるので、ここで勝って明桜の歴史を変えたいです」。決勝では気負わず、明るく、元気に自分たちらしく戦うだけ。そして、全員で歴史を塗り替える。 

(取材・文 吉田太郎)
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