【なでしこイレブン】〈1〉日テレFW遠藤純 震災で支えてくれた人たちへ「恩返し」

スポーツ報知
小学生時代、試合でドリブルを仕掛ける遠藤

 サッカー女子W杯フランス大会は7日(日本時間8日)に開幕する。スポーツ報知では、2大会ぶりの優勝を目指すなでしこジャパンの選手の横顔を5回にわたり紹介する。

 第1回は5月24日に19歳になったばかりのチーム最年少FWの遠藤純。2日には大会前最後の国際親善試合がフランスのルトゥケで行われ、FIFAランク7位の日本は同13位のスペインに1―1で引き分けた。

 開幕直前の緊張感高まる中でも、遠藤は平常心だった。途中出場から10分後の後半41分、左サイドでボールを受けると、ペナルティーエリア内へフワっと浮き球を供給。FW菅沢優衣香の同点弾の起点となった。「違ったスピード感があって、難しかった」と言うが、普段通りのプレーで試合の流れを変えた。

 19歳は「この前まで出たいと思っていたのが、実現しちゃうんだと。不思議な感じです」と大舞台を前に胸を弾ませる。50メートル6秒台の快足を生かした突破力と高精度の左足を武器に、昨年8月にU―20W杯フランス大会の優勝に貢献し、今年3月のシービリーブス杯(米国)の米国戦でA代表デビューを果たした。少ない試合数の中で持ち味を発揮し、W杯行きを決めた。

 福島・白河市の小学校卒業と同時に親元を離れ、静岡に拠点を移したJFAアカデミー福島に加入した。だが、2か月足らずで、盛んにスポーツ活動を行う成長期の男女に見られやすい、膝の下部の痛み(通称オスグッド)を発症。慣れない寮生活に加え、ボールを蹴れない日々が続いた。「サッカーを辞めたい」。父・淳さんに電話がかかってきたことは、一度や二度ではなかったという。

 それでも心は折れなかった。小学4年の11年3月、東日本大震災の時に支えてくれた人たちの顔が浮かんだからだ。被災後の約1年間、所属していた「Vamos福島」は室内トレーニングだった。週末には練習試合をするため県外へ。すると、相手チームは試合後の昼食を振る舞い、土産に菓子をくれ、中にはホームステイをさせてくれたことも。「震災でいろいろな複雑な気持ちがあるけど、サッカーで恩返しという形で良い報告ができるように頑張りたい」。物おじしない精神力の裏には強い思いがある。

 今年4月に入学した早大には週5日で通学。日テレは夜の練習が多く、一人暮らしの遠藤は「朝起きるのが大変」と、母・恵美子さんにモーニングコールをしてもらうこともしばしば。今季はなでしこリーグ開幕戦でデビュー弾を決め、7試合4得点。あどけなさの残る19歳は今、ノリにノッている。(小又 風花)

 ◆遠藤 純(えんどう・じゅん)2000年5月24日、福島・白河市生まれ。19歳。父が代表を務める「Vamos福島」の下部組織でサッカーを始め、13年4月からJFAアカデミー福島に入校。昨季は日テレの特別指定選手としてリーグ杯1試合に出場し、今季から加入。16年U―17W杯(ヨルダン)準優勝、18年U―20W杯(フランス)優勝。国際Aマッチ出場5試合0得点。167センチ、55キロ。

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