ヴィッセル神戸が三浦淳寛新監督(46)の初陣を圧勝で飾った。2試合連続4ゴールを挙げ、ホーム北海道コンサドーレ札幌戦は4-0で今季初の2連勝。主将のMFイニエスタが全4得点中3点に絡み、指導者未経験だった新監督の初采配初勝利を演出した。フィンク前監督の電撃退任を受け、2日間の準備で挑んだ三浦神戸。15試合ぶりの無失点も達成し“アツ”い船出を飾った。

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指導者完全未経験の三浦新監督の声は、ガラガラだった。「やはり初めてなので余裕はなかったが、ベンチにいるスタッフが非常に協力してくれて、落ち着いて采配できたかなと思う」。強化最高責任のスポーツダイレクター(SD)として、緊急事態で登板要請を受けた。事実上のぶっつけ本番で結果を出した。

イニエスタが贈ってくれた記念星だ。全4得点中、主将が3点に絡んだ。特に後半17分の3点目は、自陣ペナルティーエリア付近から左足で約35メートルのロングパスを供給。FW古橋が約13秒の高速カウンターを完結させた。

イニエスタは前日に「監督経験は初めてだが、神戸のサッカーを理解している」と指揮官を信頼していた。1点目はワンツー、2点目はスルーパスで演出。前節サガン鳥栖戦から連続7得点に絡む神業プレーだった。

バルセロナに在籍していた18年春、神戸の哲学を説明してくれたのが三浦当時SDだった。阪神・淡路大震災から復興を目指す街の様子も伝えられ、日本行きを決意した。「監督の前向きさで、さらに成長できる」。10歳差の新監督とは気も合っていた。

三浦監督もわずか2日の練習で、14試合失点が続く守備の修正を行った。DF西とMFサンペールの出場停止の中、プレスにいく間合いを確認した。「やりたいサッカーではないところで我慢しないといけない難しさがあった。体を張って守ってくれたので感謝しかない」。15試合ぶりの無失点を喜んだ。

三浦監督は、選手として神戸に在籍したのはわずか2年半。カズ(三浦知良)から主将を譲り受け、J2降格、J1復帰の修羅場を経験した。その古巣のために「やると決めた限りは全力を尽くす」という言葉にうそはない。選手から愛されたフィンク前監督がドイツに帰国したこの日、愛称「アツ」こと三浦監督が正真正銘、神戸の指揮官となった。【横田和幸】

◆三浦淳寛(みうら・あつひろ)1974年(昭49)7月24日、大分市出身。現役時代の登録名は「淳宏」。国見、青学大(中退)を経て94年横浜F入団。横浜、東京V、神戸を経て横浜FCで現役引退。J1通算318試合45得点、日本代表通算25試合1得点。00年シドニー五輪に年齢制限外で出場。18年神戸取締役兼SD就任。家族は夫人と1女。